キリンHD、構造改革と長期戦略で成長に挑む

2017年11月3日 11:45

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 キリンホールディングスは10月31日、米製薬大手アムジェン社との合弁を解消し、キリンが保有する合弁会社キリン・アムジェン社の50%の持ち分を約858億円でアムジェン社へ売却すると発表した。医薬事業に参入する目的で1984年に合弁会社を設立したが、その後2008年に設立した協和発酵キリンの営業利益が全体の24%を占めるまで育ってきたため、独自に成長を目指すことにしたものである。

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 キリンは、1885年に長崎のグラバー邸で有名なトーマス・グラバーが岩崎弥太郎らに勧めて設立したジャパン・ブルワリー・カンパニーが始まりである。ドイツ風ラガービールをキリンビールの商標名で発売していたことから、1907年麒麟麦酒株式会社が創立された。「食と健康」の新たなよろこびを広げていくため、酒類・飲料事業と医薬・バイオケミカル事業を中核として、構造改革と長期戦略で成長に挑むキリンの動きを見てみよう。

■前期(2016年12月期)実績

 前期実績は、売上高2兆750億円(前年比94%)、営業利益は1,418億円(同114%)であった。

 売上高前年比1,281億円の減収は、円高による為替影響850億円、販売費の一部を売上控除した380億円などである。営業利益171億円の増益は、薬価基準引き下げなど医薬事業の120億円と為替影響40億円の減益要因を、国内飲料192億円、海外飲料100億円などの増益でカバーした。

■来期(2017年12月期)見通し

 第三四半期(1~9月)までの実績にもとづいて今期見通しを、売上高は当初計画よりも100億円減の1兆9,700億円(同95%)、営業利益は60億円増加の1,520億円(同107%)に修正している。減収増益の主な要因としては、構造改革のために2月に100%出資の赤字子会社ブラジルキリン社をハイネケンの子会社へ約770億円で売却することが決定したことによるものである。

■主な部門別構造改革によるキリングループの再生と長期戦略

 1.国内キリンビール 今期営業利益見通し721億円(同103%)

 主力商品一番搾りの強化と海外でよく売れているクラフトビール取扱店の来期全国展開、嗜好の多様化に伴い、のどごし<生>、缶チューハイ、ノンアルコールなどのブランド強化。

 2.キリンビバレッジ 同200億円(同116%)

 利益ある改革に向けて午後の紅茶、生茶、Fireなど主力ブランドの強化とサプリ飲料による健康カテゴリーへの挑戦を行う。

 3.協和発酵キリン 同420億円(同121%)

 糖尿病・高血圧など腎、花粉症など免疫アレルギー、ガン、中枢神経など4つの分野に特化した製薬メーカーを目指す。

 4.長期的成長戦略

 社会との共有価値の創造(CSV)に主体的に取り組み、特に、「健康」「地域社会」「環境」の3つの社会課題に取り組むことで顧客一人ひとりの幸せに貢献する。この分野で既に、今年10月に環境情報に関する非営利団体CDPにより、気候変動分野で4年連続、水資源分野で2年連続Aリストに認定された。

 構造改革に取り組み、社会との共有価値の創造に全社を挙げて取り組むキリンの動きを見ていきたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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