「CDS」保証率急上昇のワケ

2017年10月9日 08:14

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 安倍首相による突然の「解散総選挙」を背景に、日本の国債の信頼が揺らいでいる。総選挙に関しては「希望の党」や「立憲民主党」など新党に対する世論動向、「脱安倍1強政治なるか」など、メディアは諸々の角度から論じている。だが、「消費増税or財政出動による景気回復」という与党・主要野党に共通した次世代若者層に「希望を失わせるような口先の愚策を黙って聞き流すな」、というのが私の目下の強い想いである。

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 総選挙云々が表面化するまで「安倍首相は10%の消費税増税を再三にわたり先送りするのではないか」という論はあっても、「消費増税による約1兆円分は医療・介護など社会保障費」に当て「プライマリーバランス改善に約4兆円の借金を返済する」というのは、ある種「安倍政府の公約」だったはず。だが詳細は省くが安倍首相は自らの公約をいとも簡単に変えてしまった。

 与党・野党いずれの立候補者の演説に接しても、「プライマリーバランス先送り⇔借金返済額激減」に関する論争は耳に届いてこない。アンタッチャブルの様相。

 しかし進まぬ借金財政に対し、日本の国債の信頼が揺るいでいることは紛れもない事実である。CDSの利率上昇が、それを如実に示している。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、(主に外国人)投資家が保有する国債・社債のデフォルトなど万が一に備えるリスクヘッジ商品。保有しておけば、万が一の場合にも損失が補填される。万が一の確率が高くなれば、購入時の保証利率が上がる。

 みずほ証券の試算によると「解散総選挙か」というメディア報道が相次ぎ始めた9月19日以降、それまで0・3%以下だった保証料が急激に上がりはじめ、安倍首相が正式表明した9月25日からは0・35%を突破する動きになった。「欧州通貨危機の時期などに比べると、上昇局面とはいえまだまだ低い水準」とする見方もある。だが先行きの保証はない。少なくても保証利率の上昇を盾に、名だたる格付け機関が「日本国債の格下げ/今後見通しの引き下げ」に向かう可能性を論じる声は高まってきている。

 国民を幸せに導くために「あれをやる」「これをやる」という舌戦だけの総選挙でよいのか。

 現在の国の借金をゼロにするためには「さらなる借金/政策費ゼロ」「現行税収」を前提にしても、完済には15年余かかるという試算もある。付け加えるならファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏は10月1日のヤフーニュースで安倍首相が説く「消費税増税で幼児教育が無償化された場合の家計」について「年間4万円の負担増」としている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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