スマホのコアに激震 中国ファーウェイがモバイルAI開発でオープン化推進

2017年9月4日 06:14

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Kirin970のイメージ(写真:ハーウェイの発表資料より)

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 中国ファーウェイのリチャード・ユー氏が、世界初のモバイル人工知能(AI)プラットフォーム「Kirin 970」を発表した。

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 2日、ベルリンで開催中のデジタル家電国際見本市(IFA2017)にて、中国ファーウェイ・コンシューマ部門のリチャード・ユーCEOは、基調講演の中で人工知能(AI)の将来ビジョンと題して、世界初のモバイル向けオンデバイスAI「Kirin 970」を発表した。これは、クラウド上の強力なAI技術と新たなネイティブでリアルタイムな応答性を持つオンデバイスAI技術が融合するパラダイムシフトを意味する。

 ファーウェイは、スマートフォン市場で世界3位であり、世界170カ国以上で利用されている。2011年にコンシューマー市場に本格参入し、背面にカメラレンズを2つ搭載した高品質な写真撮影が可能なSIMフリースマートフォン「P10」の発売で急成長した。今後、オンデバイスAIのネイティブな応答性能や低消費電力を武器にし、サムスンやアップルの追い上げを狙う。一方、「Kirin 970」をモバイルAIのオープンプラットフォームと位置付け、革新的な用途を見つけることができる開発者やパートナーにチップセットを提供していくという。

●モバイルAIとは

 モバイルAIは、今回発表したオンデバイスAIと従来のクラウド上のAIの組合せである。クラウド上のAI技術では、幅広いアプリケーションを見てきたが、ユーザー体験には、応答時間、安定性、プライバシーなどの改善の余地がある。勿論、クラウドAIとオンデバイスAIはお互いを補完する関係にあるが、オンデバイスAIは、人間の理解と支援の基盤となる強力なセンシング機能を提供するという。

 オンデバイスAI「Kirin 970」は、クラウドを介することなく画像認識や自動翻訳などのAI処理が可能になる。それは、瞬時に解決したい問題なのか否かといったユーザー本位の要求実現につながるのであろう。

●「Kirin 970」の構成

 「Kirin 970」は、8コアCPUと次世代の12コアGPUを搭載するAIコンピューティングプラットフォームである。10ナノメートル(1億分の1メートル)の先端プロセスで、1平方センチメートルのチップに、55億個のトランジスタを搭載する。特に、GPUでは深層学習に適した人間の脳を模したニューラルネットワーク構造を採っている。

 「Kirin 970」は、4コアCortex-A73 CPUクラスタに比べて、50倍の効率で最大25倍の性能だという。同じAI処理をより高速かつ低電力で実行する。画像認識のベンチマークでは、毎分2,000画像を処理したが、これは市販のチップより高速だという。また、効率は電力で比較するので、半分の消費電力と見なすことができそうだ。

●スマートフォンプラットフォーム(ファーウェイ、AI「Kirin 970」)のテクノロジー

 従来のスマートフォンにAI機能を付加した形態のプラットフォームであるならば、GPUの性能と低消費電力がキーとなろう。スマートフォンのプラットフォームの雄クアルコムのSnapdragon 835と同等のプロセスを用いて、搭載トランジスタ数は倍程度との情報もある。つまり、AI機能が追加され、効率的なニューラルネットワークの構成を採り低消費電力化している可能性は高いと思われる。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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