東工大、金のみを素材とした、温度差を電気に変換する電池を発明

2017年8月27日 07:58

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金原子接点を用いた両極性の熱起電力発生の概念図。(画像:東京工業大学発表資料より)

金原子接点を用いた両極性の熱起電力発生の概念図。(画像:東京工業大学発表資料より)[写真拡大]

 東京工業大学(東工大)の研究グループは、金の細線を原子レベルで精密に加工し、その両端で温度差を生じさせることにより、正負の極性の電圧を自在に発生させることに成功した。

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 物質に温度勾配を与えると、その内部の電子の運動性が位置によって変化して、両端に電圧が生じる。このような電力を熱起電力と言い、現象としては未知のものではないが、既存の熱起電力は2つの種類の物質の間で起こすものが一般的で、単一の元素によって熱起電力の両極を構築することは難しいとされていた。

 この研究では、超高真空、氷点下260度の極低温環境において、金(Au)線を固定した弾性基盤を精密な制御のもと押し曲げることで(割り箸を折り曲げるようにして)破断させ、Au原子接点を作成した。

 そうして作ったAu線の片側をヒーターで加熱、原子接点に温度勾配を与え、発生する電圧を計測したところ、電極間距離を1ナノメートル変化させるだけで、熱起電力を可逆的に、正負の符号反転を伴いながら、400%も変化したという。Auという単体の物質で、正負両方の電圧を発生させることに成功した研究は、これが初めてのものとなる。

 なお、今回の実験は真空・超低温という環境のもとで行われたが、理論的には常温でも発電を行うことは可能であるという。

 この技術を応用すれば、体温と外気の温度差で発電する、身体に付けるセンサーに用いる電源としての実用化などが考えられる。早ければ5年後までに、数ボルトの電気を発生させるだけの改良を目標としている。

 具体的には、熱起電力を発生する原子接点を複数連結し、システムとして発生する電圧を増大させ、排熱から電気を発生させる熱電変換素子を開発したいという。

 なお、この研究の成果は、英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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