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血小板の量産、「iPS細胞」で可能に 20年の承認を目指す
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7日の日本経済新聞は万能細胞「iPS細胞」を使って、血液成分の血小板を量産する技術を世界で初めて確立したことを伝えている。血小板とは血液に含まれる細胞成分の一種で、血栓の形成に中心的な役割を果たす。
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血小板は血管壁が損傷した時に集合してその傷口をふさぎ(血小板凝集)、止血する作用を持つため、外科手術時や交通事故の被害者など止血が必要な患者に使用され、輸血時に最も重要な成分とされる。血小板の輸血を必要とする手術は、国内では年間80万人に施術され、国内市場規模は薬価ベースで約700億円と推計されており、米国は国内の3倍以上の市場規模を持つ。
臓器などを他人のiPS細胞で作ると拒絶反応が起きるリスクがあるが、血小板では各患者に応じたものをストックしておき拒絶反応を回避できる。また、ウイルスなど病原体の混入も防止できるので、薬害エイズ事件やC型肝炎等深刻な社会不安を引き起こした感染拡大を防止できる。
現在、血小板は全て献血でまかなっているが、人々の意識変化による輸血の減少傾向や、人口減少などにより将来的には更に不足することが懸念されていた。iPS細胞により血小板が量産できるようになれば、献血状況に拘わらず輸血を必要とする手術ができることになる。開発主体のメガカリオンではiPS細胞を使って血小板を製造するコストは、献血によるコストよりも大幅な引き下げが可能という。また、献血の血小板は冷蔵で保存できないため採血後4日しか持たないが、iPS細胞から製造された血小板は無菌化により2週間ほど保存できるため保管コストの低減にもつながる。
大学発ベンチャーのメガカリオン(京都市)は血小板をiPS細胞から製造する技術を持ち、今回の量産技術確立には大塚製薬グループ、日産化学工業、シスメックス、シミックホールディングス、佐竹化学機械工業、川澄化学工業、京都製作所など15社が協力した。18年中にも臨床試験(治験)を始め、国が定める「再生医療等製品」に該当させて条件付き承認などの早期承認制度を活用することを見込んで、2020年の承認を目指している。
量産技術の確立には、細かな条件の設定や特殊な添加剤が必要で、フィルターで異物を除去し、血液製剤を包装する工程などにもノウハウがあり、協力各社から寄せられた要素技術を集約して実用化にめどを付けた。今後は生産設備を持つ企業に製造に委託する予定だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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