関連記事
仕事経験を積むと変わることもある「大企業志向」
6月1日から新卒採用の選考が解禁されましたが、すでに学生の3人に1人は内定を持っていると言われ、完全な売り手市場の様子が見えます。また、来春以降はこの傾向がさらに進んでいくと見られています。
【こちらも】72.2%の企業が人材確保について何らかの取り組みを実施
しかし、就職情報大手のリクルートキャリアによると、今年の就活での1人の学生に対する求人倍率を従業員数別でみると、300人未満が6.45倍なのに対して、5000人以上が0.39倍と大きな差があるということです。学生の大企業志向の強さがわかるとともに、大企業の求人数はそれほど伸びておらず、選考基準も下がっていないため、売り手市場であってもかなりの狭き門だということです。
今のような先行き不透明な経済環境の中で、超がつくような大企業が経営不振に陥ったり、倒産の危機に瀕したりする時代ではありますが、一般的に見た大企業の安定性は、やはり中小規模以下の企業とは比べ物になりません。大企業志向になる気持ちは、よくわかる気がします。
また、大企業の方が資金や人材は豊富で、大きな仕事ができる可能性はそちらの方が大きいですし、その他のリソースもたくさんあります。できることの幅が広いという見方ができます。
その一方、大企業は仕事の分業が進んでいて、会社がやっているすべてのことに関わることができるわけではありません。社外価値があまり高いとは言えない、専門的でニッチなことに集中している人も大勢います。
こういうところを見ると、幅が狭いともつぶしが効かないとも言えますから、大企業に入ったすべての人が確実な安定を得られることはありません。
私も仕事柄、いろいろな方とお会いしますが、最近は特に、大企業を辞めて仕事をしている人に数多く出会います。起業した人ももっと小さな会社に転職した人もいますが、そういう方々が共通して言うのは「大きな組織の中で思うことができなかった」ということです。
やはりその人が何をやりたいかによって、それができる環境、やりやすい環境は違います。そしてその環境は、必ずしも大企業だからよいということではなかったということでしょう。
私自身は大企業の人と一緒に仕事をする機会はたくさんありますが、大企業に社員として入って仕事をした経験はありません。
そんなことから、どうしても第三者的な見方になってしまいますが、私が見てきた印象で言うと、大企業に向いている人と向いていない人は、わりとはっきり分かれていると思っています。
ただし、これは向いている人が組織に残って、向いていない人が辞めているということでもありません。あくまで性格や考え方や行動パターンを見ていて思うことで、大企業に向いていなさそうな人が、社内で何か事業を任されてバリバリやっていたり、逆に向いていそうな人が辞めてしまって、大企業的な行動パターンから抜けられずに苦労しているということもあります。
結局、大企業だから安定するということはなく、自分のやりたいことができるかどうか、まだやりたいことがわからないなら、それが見つけられそうかどうか、それに見合った経験を積むことができるかどうかが、自分の安定につながるのだと思います。
確かに大企業は優秀な人材が集まってきますし、その中で切磋琢磨することで自分の力を伸ばすことができます。責任ある立場になれば、大きな仕事を動かすことができます。
その一方で、仕事の分業が進んでいて、自分が知らないことを放置していても、それを担当している「誰か」が物事を進めてくれます。会社のブランドに依存していることを忘れがちになり、自分の本当の能力、レベル、市場価値を見誤ることがあります。
学生に対して「大企業ばかりにこだわるな」という人がいて、それは確かにその通りですが、大企業で働く経験は、ごく一部の選ばれた人しかできません。その経験ができるチャンスがあるならば、チャレンジしてみるべきだと思います。ただし、その先の自分自身の安定は、自分自身で見出すしかありません。
仕事経験を積んでいくと、その中で「大企業志向」は変わっていくことがあります。
「自分の力が一番発揮できる場所」が、自分にとっての安定につながるのだと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
スポンサードリンク