つまずき気味の「プレミアムフライデー」をこれからどうするか

2017年6月7日 11:43

印刷

 それなりのふれ込みで始まった「プレミアムフライデー」ですが、始まってから数回の今の段階で、もうすでに失速気味の感じがしています。

 いろいろな企業で働いている人に幅広く聞いても、実際に利用したという人は少数派で、それも初回か2回目だけ、以降はあったことすら忘れていると言っています。

 最も直近に、ジャストシステムが実施した調査の結果を見てみると、「プレミアムフライデー」を知っている人のうち、「月末という条件を変えた方がいい」という人が56.4%、「15時という条件を変えた方がいい」という人が51.0%、「金曜日という条件を変えた方がいい」という人が38.8%ということでした。

 私の周りでは、天の声で一斉に実施するようなやり方自体を批判する人もいました。確かに同じ会社の同じ部門の中であっても、忙しい時期はその人その人によって違います。これを全社、全国レベルで合わせようとしても、そこにはかなりの無理があります。

 ただその一方、日本では相変わらず有給休暇の消化率が伸びず、その理由には「自分だけ休むことへの後ろめたさ」があります。これが大企業であればまだましですが、一人一人の持ち場が広い中小企業となると、「休むな」という無言の圧力は、未だあちこちにあります。
 そうなると、国の施策で一斉にやらなければ物事が進まないという考え方には理解できるところもあります。

 ただ、やはり調査結果を見た通り、今の実施のしかたにはかなりの問題を含んでいます。仮にこのまま続けても、私は定着せずに終わってしまうと思います。

 なぜ今のような実施のしかたになったのか、何か調査などがされた上でのことなのか、私はそのあたりの経緯をよく知らないので、その点は何とも言えません。
 ただ、見ていて一つだけわかるのは、この実施方法では「レジャーに都合がいい日」という考え方が先に立っていて、「仕事を切り上げやすい日」という発想がほとんど感じられないということです。月末もしくは月初で、しかも毎月のこととなると、いくら早く帰ろうと考えても、そう簡単にはいかない人が大勢いるでしょう。

 金曜日というのは、有休をとったり、宴会などがあったり、確かにレジャーに使われる機会は多いです。きっと昔からの「花金」の発想もあったでしょうが、有休や宴会はそこまで年中のことではないでしょうし、普通の宴会や食事会などは、仕事終わりの夜の時間帯ですから、日常の仕事のリズムの中で行われることです。休前日ということでは、その日のうちに仕事を終わらせておきたい人もいるでしょう。

 例えば、企業の「ノー残業デー」といったものは、水曜日など週半ばのことが比較的多いですが、これは休日と休日の真ん中で、最も「仕事を切り上げやすい日」だろうということが、この日に当てられている一番の理由です。
 この強制度は会社によってまちまちですが、それぞれの社員は「ノー残業デー」に対応するために、仕事を別の日にずらすなどしながら調整しています。やはり、あくまで「仕事が優先」ということです。

 私はやはり「月末」「毎月」「金曜」「15時」といったところは、一度考え直した方が良いと思っています。また、今のうちに見直さなければ、「プレミアムフライデー」は完全に廃れてみんなの意識から消えてしまい、もう一度やり直すことが一層難しくなります。

 今の段階で「こうすれば絶対に良い」というものは見当たりません。ただ、いろいろな要素を見直しながら利用状況を見ていけば、必ずどこかに良い落としどころがあるはずです。

 「プレミアムフライデー」は、せっかく意図をもって始めた取り組みです。もっと柔軟に考え直していく必要があると思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事