線虫ががんを診断 九大発ベンチャーが新しいがんの診断手法開発へ

2017年5月9日 08:33

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記事提供元:エコノミックニュース

九州大学発のベンチャーHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ)は、同社開発の線虫がん検査法「N-NOSE」(エヌ・ノーズ)の実用化に向けて、日立製作所<6501>と共同研究を進める方針を明らかにした。日本におけるがんの疾病費用は、間接費用を含めると約10兆円と大きな社会的負担となっている。

九州大学発のベンチャーHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ)は、同社開発の線虫がん検査法「N-NOSE」(エヌ・ノーズ)の実用化に向けて、日立製作所<6501>と共同研究を進める方針を明らかにした。日本におけるがんの疾病費用は、間接費用を含めると約10兆円と大きな社会的負担となっている。[写真拡大]

 九州大学発のベンチャーHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ)は、同社開発の線虫がん検査法「N-NOSE」(エヌ・ノーズ)の実用化に向けて、日立製作所と共同研究を進める方針を明らかにした。日本におけるがんの疾病費用は、間接費用を含めると約10兆円と大きな社会的負担となっている。日立開発の線虫がん検査自動解析技術により大量のがん検査を高精度で実現し、がんの早期発見を目指す。

 ヒロツバイオは、線虫ががん患者の尿には近づき、健常者の尿からは離れる特性(化学走性)を利用したがん検査法を研究してきた。同検査法は、尿を検体とした簡便で安価な検査方法でありながら、多種類のがんを高精度かつ早期に発見可能という特長を持つ。画像診断では判読しにくい臓器のがんも検出でき、早期がんから発せられるごくわずかな物質を感知。腫瘍マーカーでは検知が難しいステージ0~1のがんも検知可能とのこと。

 これに対して、日立はがんの化学走性試験における一連の工程を自動化している。観察工程においては、プレートを撮影し線虫の数を光の度合いをデータ化。目視に依らない線虫の反応の定量評価と、走性試験結果の自動判別を実現した。また、線虫によるがん検査では、線虫の状態などにより検査結果が不安定になるが、連続撮影による線虫の移動度を検査品質の判定基準とすることで全ての検査品質を定量的に良否判定可能とした。

 同じく、生物の特性・能力を利用した尿検査によるがんの早期発見を目指す動きでは、がん探知犬の活用も進められており、山形県金山町が全国の市町村で初めてがん探知犬を利用した検査を導入することを発表している。がん特有のにおい物質を犬が探知しがんを早期発見する研究が2010年より日本医科大千葉北総病院などで進めており、今回の導入は同検査実用に向けた大きな一歩となる。

 こうした簡便で精度の高いがん検査法の普及により、頻繁ながん検査の受診が可能となると考えられ、これによる早期がんの発見が疾病費用を抑え、多種類のがんでの生存率を高めることが期待される。(編集担当:久保田雄城)

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