良書に触れるきっかけはファッションから、小さな本屋の新しい試み

2017年5月9日 06:48

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小説の世界観を表現したTシャツ(一進堂の発表資料より)

小説の世界観を表現したTシャツ(一進堂の発表資料より)[写真拡大]

  本、雑誌が売れない時代に一石を投じることができるか?埼玉県朝霞に本社を置く書店・一進堂が自社ブランドHELLO BOOKS(ハローブックス)にて1919年出版の海外小説「月と六ペンス」をモチーフにしたTシャツなどのファッション雑貨を4月25日から販売している。

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 昨今おかれている出版不況をまずは整理したい。全国出版協会出版科学研究所の調べによると2016年度の書籍・雑誌の推定販売金額は前年比3.4%減の1兆4,709億円だった。1996年のピーク2兆6,564億円と比較すると約半分の売り上げだ。紙媒体の売り上げは12年連続減少。2016年度の内訳は書籍が0.7%減の7370億円、雑誌が5.9%減の7339億円となり、41年ぶりに雑誌の売り上げが書籍を下回る結果となっている。書籍の売り上げ減少に伴い、全国の書店数も減少を続けている。2006年14,555店から2015年には10,855店となっている。

 各出版社・本屋は紙媒体の売り上げを上げたい一心で試行錯誤しているが、一進堂は若者たちが良書に触れる機会が少ないと分析。そこで「文学に興味を持ってもらう入口として」「作品を知らなくても興味を持つファッション性の高いアイテム」といった点をクローズアップし商品開発したという。小説の世界観を表現したTシャツ3種類、バッグ1柄4色という豊富なバリエーションを用意。一進堂のネットショップ「CHIENOWA BOOK STORE」はじめ、全国の書店でも購入可能だ。ファッションが先に触れ、文学への興味へ先導。文学とファッションのコラボレーションが一大ブームとなり、出版業界が再び息を吹き返すことができるか!?

 最後に小説「月と六ペンス」のあらすじを少しご紹介。1919年出版されたイギリスの作家サマセット・モームの代表作。画家ポール・ゴーギャンをモチーフにした小説で、全世界でベストセラーになり、現在でも新訳として重版を続けている。数ページ読み始めると、一気に読みたくなること必至。ぜひお手にとってもらいたい一冊だ。(記事:久保圭大郎・記事一覧を見る

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