容量は従来の15倍 リチウム空気電池を開発

2017年4月7日 08:07

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カーボンナノチューブ空気極。(物質・材料研究機構発表資料より)

カーボンナノチューブ空気極。(物質・材料研究機構発表資料より)[写真拡大]

 従来の蓄電池、リチウムイオン電池は、小型で高電圧、長寿命という優れた特性ゆえに広範な領域で活用されているが、蓄電容量を決定付けるエネルギー密度が既に技術的にほぼ限界に達してしまっている、という重大な問題がある。これを打開するための、新しい蓄電池の開発は各所で急ピッチで進められ、様々な新技術が次々に現れているところだが、今回、国立研究開発法人物質・材料研究機構の研究開発グループは、リチウムイオン電池の15倍の蓄電容量を持つ「リチウム空気イオン電池」の開発に成功した。

 理論的には、リチウム空気電池というものは、あらゆる二次電池の中で最高のエネルギー密度を実現しうるとされ、一説には「究極の二次電池」とまで言われているという。ただし、過去の研究はまだ基礎的・理論実証的なものばかりで、実際に巨大容量を持つ電池を作った例はなかったという。

 今回達成されたスコアは、現実的なセルの形状に形成したうえで、単位面積あたりの容量が30ミリアンペア/平方センチメートル。この値は、従来のリチウムイオン電池(2ミリアンペア/平方センチメートル程度)を圧倒するものである。

 実際にどういうものであるのかを解説してみよう。構造としては、正極(空気極)、セパレータ、負極(リチウム金属)を重ね、電解液を入れただけという簡単なものであるという。このリチウムが溶け出し、正極で酸素と反応して過酸化リチウムが析出すると、その析出量が蓄電容量になる。

 よって、正極にはできるだけ多孔質の材料を使うのが望ましいらしい。そこで今回の開発に当たって用いられたのは、CNT(カーボンナノチューブ)である。CNTの柔軟さと強靭さの故に、析出するリチウムはCNTシートを押し広げ、体積を増大させ、蓄電量を拡大することができたという。

 なお、研究の詳細な成果は、Scientific Reports誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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