米メキシコ国境壁、工費2兆4500億円との試算

2017年2月12日 16:45

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トランプ大統領の構想は、そもそも果たして実現するのだろうか?

トランプ大統領の構想は、そもそも果たして実現するのだろうか?[写真拡大]

 トランプ大統領が建造を主張しているアメリカ・メキシコ間の国境を閉ざす壁の建設について、米国土安全保障省が報告書を作成、「費用は最大で216億ドル(約2兆4,500億円)になり、工期は最低3年を要する」とまとめたと、ロイター通信が報じた。

 トランプ大統領は既に壁の建造を命じる大統領令に署名しており、その上、「費用はメキシコ政府が支払う」と説明している。ただし、メキシコ政府はこの要求に対し全面拒否の構えを取っている。

 若干、誤解されている向きがあるかもしれないが、アメリカ・メキシコ間の国境の壁は、オバマ政権以前にも作られたことがないわけではない。両国の国境線は約3,000キロメートルだが、うち約1,000キロには既に壁などが存在する。トランプ大統領の主張は、残りの2,000キロにも壁やフェンスを作る、ということである。

 ちなみに2,000キロというのがどれくらいの距離かというと、日本でいうと、知床岬から種子島までが直線でほぼ2,000キロである。つまり、日本列島の端から端までに匹敵する長さだというわけだ。

 トランプ大統領は壁を建造する理由について「不法移民の流入を防ぐためだ」としている。壁やフェンスを作ることが、不法移民の流入を防ぐという目的に対しどの程度有効であるか、また、コストパフォーマンスを考えた場合に合理的といえるか、といったような議論は、この場には余るものであるから言及しない。

 ただ、いくつかの歴史的実例を見てみよう。世界史にその名を残す有名な「壁」が3つある。第一は、万里の長城。これについては多くの説明は要さないであろう。中華歴代王朝が、北方騎馬民族の侵攻に備えて作った防壁である。

 第二が、ハドリアヌスの長城。かつて古代ローマ帝国のグレートブリテン島南部の領土と、北部の先住民の領域とをわかった、壁とはいうが実態としては長大な軍事要塞である。事実上、この壁を境に、イングランドとスコットランドの文化的分断が生まれたといわれる。

 第三、一気に時代が飛んで、いわゆる「ベルリンの壁」。東ドイツ領土内に孤立する西ベルリンを包囲した、全長約155キロメートルの壁だ。

 今となっては完全に歴史書の1ページに過ぎないが、往時を知る者にとっては、ベルリンの壁は東西冷戦の象徴そのものであった。そして、あの壁がもっとも大きな歴史的役割を果たしたのは、「破壊された時」であった。

 「トランプの壁(仮称)」も、21世紀における人類の大いなる分断を象徴する存在となるのであろうか?(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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