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揺れだした国産ジェットMRJ開発、三菱重工社長直轄プロジェクトに
国産初のジェット旅客機MRJの開発について、三菱重工業の宮永俊一社長が11月よりプロジェクトを社長直轄にする意向を10月31日に発表した。[写真拡大]
国産初のジェット旅客機MRJの開発について、三菱重工業<7011>の宮永俊一社長が11月よりプロジェクトを社長直轄にする意向を10月31日に発表した。これまでは連結子会社の三菱航空機社長(三菱重工常務執行役員)がプロジェクトを主導していたが、不具合や納期遅れが立て続けに起きていることから、親会社が責任を持って事業を取り仕切る体制へと転換する。
これまで4回に渡る納期の遅延があったほか、10月13日には2号機が日本海側の空域で試験飛行中に主翼部品カバーが落下。能登空港に緊急着陸したという不具合も発生している。不具合と度重なる納期遅れ、そして今後更なる納期遅れの可能性も示唆されており、MRJの開発に対して不安視する声も挙がっている。宮永社長は「プロジェクトにネガティブな印象があってはいけない。三菱重工としての決意をお示しする。長期的な観点での難しい決断は、トップがやった方が良い」と会見で述べた。
三菱重工では、11月半ばに「MRJ事業推進委員会」を設置し、トップとして宮永社長が直接指揮を執る。ここで量産体制や納入予定など将来的な計画を決め、来年の2月をめどに今後の方針を公表する予定だ。こうした体制つくりには、三菱重工が親会社としてMRJの開発に責任を持って主導していく決意が表れている。
初の国産ジェット旅客機開発プロジェクトであり、日本の航空機産業隆盛のきっかけとして期待されていただけに、不具合や度重なる納期遅れによって、MRJの開発に対して悲観的な報道がなされている。三菱重工の社内体制を疑問視するメディアも見受けられる。
しかし一方で航空機開発に納期遅れはつきものだ。世界を代表するボーイング社でさえB787の納入は何度も変更されたし、エアバス社でも同様にA380のローンチ時には納期遅れが生じていた。航空機メーカーにとっては安全性が担保された製品を出すことが何よりも優先される。世界的トップクラスの航空機メーカーでも、安全性を担保するために納期を遅らせるという苦渋の決断を余儀なくされてきたのだ。
納期に間に合うことが一番理想的ではあるが、ローンチしてから重大なトラブルが起きては、それこそ三菱重工ひいては日本という国に対する信頼を失墜しかねない。国の威信を掛けたプロジェクトだからこそ、試験飛行の段階でしっかりと膿を出し切り、安全性を確保した上で納入する必要がある。納期遅れが大きくクローズアップされているが、まずは安全性が担保された国産ジェット旅客機開発を期待したい。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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