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石炭を天然ガスに変えるメタン生成菌とは
コールベッドメタンという物質がある。は近年、石炭層中の非在来型天然ガス資源として世界各国で開発が進められている。コールベッドメタンの形成については、石炭層に生息する微生物の活動がその成因の1つと考えられているが、その詳しいメタン生成メカニズムは不明であった。
今回、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ 眞弓大介研究員、持丸華子主任研究員、吉岡秀佳上級主任研究員、坂田将研究グループ長、燃料資源地質研究グループ 鈴木祐一郎主任研究員、生命工学領域 鎌形洋一研究戦略部長(生物プロセス研究部門付き)、生物プロセス研究部門 生物資源情報基盤研究グループ 玉木秀幸主任研究員、山本京祐元産総研特別研究員らは、石炭中のメトキシ芳香族化合物から直接メタン(CH4)を生成するメタン生成菌を深部地下環境から発見し、石炭層に広く分布するコールベッドメタンの形成にこのメタン生成菌が重要な役割を担っている可能性を明らかにした。
石炭は主に植物のリグニンに由来する有機物からなり、その高分子構造内にはメトキシ芳香族化合物が含まれている。この研究では、まず石炭の構成成分であるメトキシ芳香族化合物からメタンを生成できるメタン生成菌を探索するため、上記のAmaM株を含む11種のメタン生成菌を各種メトキシ芳香族化合物と共に培養した。その結果、AmaM株とその近縁株のMethermicoccus shengliensis ZC-1株が、30種類以上のメトキシ芳香族化合物からメタンを生成できることを発見した。
メタン生成菌が初めて発見されてから現在までの半世紀以上の間に、150種以上のメタン生成菌が発見されてきた。しかし、既知のメタン生成菌が利用できる基質(餌)は、(1)水素と二酸化炭素、(2)酢酸、(3)メタノールなどのメチル化合物、といった単純な化合物に限られており、メトキシ芳香族化合物のような比較的炭素数の多い化合物から直接メタンを生成できるメタン生成菌の発見は今回が初めてであるという。
また、従来のメタン生成経路(代謝経路)も基質の種類に対応して(1)二酸化炭素還元経路、(2)酢酸分解経路、(3)メチル化合物分解経路の3種に限られていたが、AmaM株やZC-1株はこれらとは異なるメタン生成経路を介してメトキシ芳香族化合物からメタンを生成することを明らかにした。この新規メタン生成経路の詳細については未だ研究中であるが、今のところ、①二酸化炭素還元経路と②酢酸分解経路が混合し、並列して進行する第4のメタン生成経路である可能性が明らかになったとしている。
さらに、AmaM株が単独で石炭からメタンを生成できるかどうかを調べるため、各種石炭を含む石炭培地でAmaM株を培養した。その結果、AmaM株は褐炭や亜瀝青あれきせい炭たん、瀝青れきせい炭たんを含む培地でメタンを生成した。しかも、これらの培地からは数種類のメトキシ芳香族化合物が実際に検出され、特に、石炭化度が低くメトキシ芳香族化合物が比較的多く検出された褐炭においてメタン生成が顕著であったという。
今後はメトキシ芳香族化合物からメタンを生成する代謝経路の詳細を明らかにするとともに、メトキシ芳香族化合物を利用するメタン生成菌の地下圏における分布と、天然ガス資源の形成における実質的なポテンシャル評価を行う予定であるとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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