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「2度あることは3度あるか?」を脳が計算 理研がそのメカニズムを解明
街で知らない飼い犬に突然襲われるような怖い体験をすると、その体験は出来事が起こったときの状況と強く結び付いて記憶される。例えば、犬に襲われる直前に門がバタンと開く音がしたなど、その体験と結び付いた情報があった場合、その後はバタンという音を聞いただけで怖い体験がよみがえってくるかもしれない。“2度あることは3度ある”というが、私たちは同じ状況に再度遭遇すると、嫌悪、恐怖、不安、喜びなどの情動とよばれる記憶によって起こりうる結果を予測し、対応しようとするという。
ところが、“2度あっても3度目はない”ということも起こる。実際に、門が開くたびに必ず犬に襲われるわけではない。これを「随伴性の低下」という。随伴性が低下すると、バタンという音の情報の意味が曖昧になり、怖い体験との結び付きが弱まって恐怖を感じなくなる。“2度あることは3度あるかどうか?”と情報が曖昧になるとき、その情報が脳内でどのように計算・蓄積されて、一旦形成された強い記憶を弱めるのか、そのメカニズムは不明だった。
今回、理化学研究所の研究者を中心とする国際共同研究グループは、ラットの連合学習と手がかりの競合モデルを用いて、このメカニズムを解明しようと試みた。最初にラットを箱Aに入れ、音と同時に嫌な刺激である電気ショックを脚に繰り返し与えた。翌日、同じラットを箱Bに入れ音だけを与えると、ラットは嫌な体験を思い出して「すくみ反応」を示した。すくみ反応とは動物の恐怖反応の1つで、体を動かさずにしばらくじっとしている行動である。つまり、連合学習によってラットには音に対する恐怖の記憶が形成されたのである。
次に、ラットに箱Aで音と電気ショックを同時に3回与えた直後に、音は与えず電気ショックだけを繰り返し与えて随伴性を低下させると、翌日、ラットは音に対してすくみ反応を示さなかった。ところが、このラットを箱Aに入れると、すくみ反応を示し、電気ショックの嫌な体験を記憶していることがわかった。これは、「音の情報が曖昧になることによる記憶の低下は、箱という別な手がかりの記憶と競合した結果ではない」ことを示しているという。
さらに、国際共同研究グループは大脳辺縁系の一部である「扁桃体」で、情報の曖昧さが計算され蓄積されることを、光遺伝学、電気生理学、数理モデルを用いた解析によって明らかにした。この研究は、不安障害などの精神疾患の発症メカニズムの理解につながると期待できるとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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