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指と腕の協調的な動きをトレーニングする高齢者向けゲームを開発―筑波大・星野准一氏、システム・インスツルメンツ社
筑波大学の星野准一准教授らの研究グループは、システム・インスツルメンツ株式会社と共同で、五指と上肢の協調動作を計測・トレーニングするための高齢者向けゲームシステムを開発した。
日常生活においては、モノを持つ、ドアを開ける、高いところにあるモノをとる、料理をする、自動車の運転をするなど、様々な活動の過程で視覚情報に基づき五指と上肢の協調的な運動を行っている。しかし、五指と上肢の協調的な動作は複雑で分析が困難なため、指のみ、あるいは上肢のみの動作に比べると研究は進んでいなかった。
今回の研究では、五指と上肢それぞれの運動要素を調べ、それらが日常生活の中でどのように協調しているかを分析し、このような動作のトレーニングを行うためのシステムの開発を試みた。まず五指の圧力と上肢の動きを計測できる独自のコントローラを開発し、五指と上肢の協調的な運動を上肢把持動作と定義し、その運動要素を「五指それぞれがコントローラを押さえる力とそのバランス」「各指の運動能力」「上肢運動の滑らかさ」「肩の可動範囲」「五指と上肢の協調」「両手の協調」の6つの項目に分けてそれぞれの運動要素を計測するためのゲームコンテンツを作成した。
健康な高齢者群、男女3名ずつ計6名と若年者群、男女3名ずつ計6名12名にゲームシステムを利用してもらった結果、肩の可動範囲では若年層の標準偏差が±8.29(度)であったのに対し、高齢者層が±18.9(度)であったほか、上肢と五指の協調では若年層の標準偏差が±0.63(秒)、高齢者層が±18.5 (秒)であったなど、すべての運動要素において若年者に比べ高齢者の1人1人の運動能力や特性のばらつきが顕著であることが明らかになった。
今後は、多数の被験者からデータを収集し、加齢とともに衰える運動能力として、より適した評価指標を統計的に決定することや、今回のシステムの長期的な利用で、運動能や認知症予防にどういった改善効果が現れるのかを具体的に調査していくことが課題になるという。
今回のゲームは『認知症予防「まゆっこ」データーロガー』として一般発売が開始されている。利用者は、画面上のキャラクターと同じ動きをするだけでトレーニングができる。運動のログは専用コントローラを通じてPCへと蓄積され、レーダーチャートなどへ視覚化できる。利用者や作業療法士がこの結果を確認することで、現在の運動能力を把握でき、過去のデータと比較することでどういった改善や衰えがあるのかもわかるという。
今回の研究成果は、情報処理学会論文誌(IPSJ Journal)に掲載された。論文タイトルは、「Game System of Coordination Skills Training for Elderly People(和訳:高齢者の協調動作をトレーニングするためのゲームシステム)」。
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