京大、リチウムイオン電池を上回る新型蓄電池の基礎技術を構築

2016年4月17日 20:37

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京都大学の小久見善八特任教授らの研究グループが開発した革新型蓄電池(リザーバ型)の概念図。(京都大学の発表資料より)

京都大学の小久見善八特任教授らの研究グループが開発した革新型蓄電池(リザーバ型)の概念図。(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の小久見善八特任教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の限界を凌ぐ高いエネルギー密度500Wh/kgを見通す新型蓄電池の基礎技術を構築した。

 リチウムイオン電池(LIB)ではイオンを収納する入れ物(ホスト材料)の間でリチウムイオンをやり取りする(インサーション型蓄電池とする)ことで充放電を行うため、繰り返し充放電特性(サイクル特性)に優れるという利点がある一方で、ホスト材料の重量や体積が嵩むために、達成可能なエネルギー密度に限界がある。この入れ物を廃して、金属そのものを電極として利用するリザーバ型蓄電池にすればエネルギー密度は大幅に向上するが、サイクル特性に大きな問題を抱えることになる。

 今回の研究では、革新型蓄電池としてこのリザーバ型に注目し、反応種の適度な溶解性が可能な環境づくりを目指して、種々の材料において検討を試みた。

 リチウムイオンを多量に挿入脱離する金属フッ化物電極は、放電で生成するフッ化リチウムが固体のため、充電受け入れ性が低いという問題があった。そのため、フッ化リチウムが適度に電解液に溶解するような添加剤としてアニオンレセプターを添加剤として加えることにより、サイクル特性を大幅に向上させることに成功した。

 また、多量のリチウムイオンと反応する硫黄電極においては、従来は放電により硫黄が溶解して寿命が短い問題があったが、硫黄を金属と共有結合した非晶質な金属硫化物として固定化することにより、安定した充放電が可能になった。

 その反応機構について、大型放射光施設 SPring-8における高エネルギーX線回折を適用したところ、充放電で硫黄原子どうしの結合が形成/解離することが分かった。

 研究メンバーは「今回の研究では、従来は使用が困難であると考えられてきた系を、溶解度制御という新規コンセプトに基づいて再検討し、LIBを遥かに凌ぐエネルギー密度500Wh/kgを見通す高エネルギー密度の革新型蓄電池の構築が可能であることを示しました。今後、本研究開発成果を活かした電池系が、長期サイクル特性や出力特性・安全性といった蓄電池に求められる諸特性をクリアすることにより、電気自動車などの電源として搭載され、エネルギー・環境問題の解決に貢献することが期待されます」とコメントしている。

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