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Wi-Fiより100倍以上速い「Li-Fi」とはなにか?
北欧の国エストニア。その首都であるタリンで今、Wi-Fiより100倍以上速いとされる新しい通信技術の実験が行われている。その技術は「Li-Fi」と名付けられた。この実験での測定速度は、1秒あたり1ギガバイトという速度だ。[写真拡大]
北欧の国エストニア。その首都であるタリンで今、Wi-Fiより100倍以上速いとされる新しい通信技術の実験が行われている。その技術は「Li-Fi」と名付けられた。この実験での測定速度は、1秒あたり1ギガバイトという速度だ。実験段階でも大抵の映画を2秒足らずでダウンロードできてしまうスピードである。しかも、研究室での理論速度は1秒あたり244ギガバイトのダウンロード速度が計測された、と言うから驚きだ。
しかし、このLi-Fiの本当のすごさの理由は速度ではなく、その通信方法にある。この通信方法では、光の点滅を利用してデータを受信する。電灯などの人工的な光は、人間には認識できない速さで点滅を繰り返している。その点滅を利用し、光の「オン」を「1」に、「オフ」を「0」に置き換える。コンピューターが認識できる、「1と0」だけで構成された「バイナリー・データ」に光を置き換えるのだ。従来のWi-Fiなどの電波通信とは違い、干渉が少ないLi-Fiは冒頭で述べたような凄まじいスピードでのデータ通信が可能というわけだ。
Li-Fiは速度だけではなく、その安全性も優れている。壁を通り抜ける電波とは違い、光で通信を行うLi-Fiは壁を通り抜けることはない。つまり、壁をへだてた、離れた距離からは傍受ができないということだ。この性質を利用すれば、近年増えている、政府機関から情報の漏洩や、サイバー攻撃による被害を防ぐことができるかもしれない。また、従来の電波通信は、機器類への干渉を防ぐために飛行機や病院などの一部施設では利用できなかった。そのような場所でも通信が可能になる。
この技術は、2011年にドイツ人物理学者のハラルド・ハースにより発明された。彼は、TEDというカンファレンスでのスピーチで、たった3ドルのデスク・ランプで高画質の動画をダウンロードするというデモンストレーションを披露した。既存の電灯に少し細工を加えるだけで、この技術は適応可能だということを示したのだ。この特徴はかなり革新的だ。
なぜなら、その技術を広めるために、新しいインフラの整備を必要としないからだ。ハラルド氏によると、世界中にある140億以上の電灯にマイクロチップを取り付けるだけで、この技術は利用可能だと言う。光は通っているが、インターネットが通っていない地域に住む人々も、Li-Fiによるデータ通信を利用できる。
ハラルド氏はTEDのスピーチでこう語った。「わたしたちが持っている140億以上の電灯が、ワイアレス通信の送受信機にもなれば、いったいどんなことが起きるでしょうか。」
商品化も、あと3年足らずで実現できると言われているこの技術。Li-Fiによって、世界の通信が大変化を遂げるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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