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可視光と水と空気から、アンモニアを合成することに成功―北大・三澤弘明氏ら
アンモニア(◆)と酸素(■)の生成量の時間依存性とその生成比率(▼)を示す図(北海道大学の発表資料より)[写真拡大]
北海道大学の三澤弘明教授・押切友也助教らによる研究グループは、窒素を効率よくアンモニアに変換できる助触媒を開発し、水・窒素・可視光からアンモニアを選択的に合成することに成功した。
アンモニアは、燃焼や爆発の危険性が低く、比較的容易に液化できることから、次世代のエネルギーキャリアとして期待されている。一方、アンモニアは工業的にハーバー・ボッシュ法と呼ばれる製法で製造されているが、この製造のために世界のエネルギー消費の1%以上が消費されている。アンモニアをエネルギーキャリアとして有効に用いるためには、低エネルギーでの合成法の開発が望まれている。
今回の研究では、酸化物半導体の一つであるチタン酸ストロンチウムの単結晶基板上に、光アンテナ構造として金のナノ粒子(平均粒径50nm程度)を高密度に配置し、その背面に窒素をアンモニアへ変換する助触媒としてジルコニウム/ジルコニア混合物(Zr/ZrOx)の薄膜を成膜した電極を作製した。
そして作製した電極を、金ナノ粒子側が酸化槽、Zr/ZrOx側が還元槽に接するように設置し、酸化槽にはアルカリ性水溶液を、還元槽には酸性素溶液と窒素ガスを封入し、可視光を照射した。その結果、アンモニアと酸素がおよそ4:3の比率で生成されることがわかった。
今回の手法は、これまでのアンモニア光合成と比べて反応を促進する犠牲試薬の添加が不要で、極めて高い選択性で窒素がアンモニアに変換される利点があるという。
研究チームは、今回の研究をさらに進めることで、太陽光中に含まれる可視光と、大気中に含まれる窒素、水からアンモニアを生成できる、環境負荷の低い「光アンモニア合成」の実用化につながることが期待できるとしている。
なお、この内容は「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。論文タイトルは、「Selective Dinitrogen Conversion to Ammonia Using Water and Visible Light through Plasmon-induced Charge Separation」(和訳:プラズモン誘起電荷分離を利用した水と可視光による窒素のアンモニアへの選択的変換)。
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