電気を通す透明ラップフィルムを開発、曲面タッチパネルなどへの応用に期待―産総研・吉田学氏ら

2016年1月31日 21:39

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開発した導電性透明ラップフィルムにLEDを接続し、苺の包装フィルムとして用いた例(産総研の発表資料より)

開発した導電性透明ラップフィルムにLEDを接続し、苺の包装フィルムとして用いた例(産総研の発表資料より)[写真拡大]

 産業技術総合研究所の吉田学研究チーム長・植村聖主任研究員・延島大樹特別研究員は、トクセン工業と共同で、電気を通す透明ラップフィルムを開発した。このフィルムは、高伸縮性・透明性・電気的安定性・強靭性を同時に実現しており、曲面タッチパネルやウェアラブルセンサーなどへの応用が期待されるという。

 産総研では、柔軟な大面積電子デバイスや様々な形状の電子デバイスの研究開発を進めており、今回は世界最高峰の伸線加工技術を持つトクセン工業の極細ワイヤと組み合わせることで、これまでにない高伸縮性・透明性・電気的安定性・強靭性を同時に備える柔軟な導電性フィルムの実現を目指した。

 開発したラップフィルムは、二枚の柔軟なフィルムの間に極細金属ワイヤが波状になるようにはさみこんだ構造となっている。極細金属ワイヤとして弾性の高いピアノ線を用いることで、伸縮する際にも金属疲労が起こらず、断線に強い高伸縮性の導電性ラップフィルムが作製できたという。

 今回用いたピアノ線は肉眼で認識することは難しい細さで、ラップフィルムには十分な透明性が確保されている。また、金属ワイヤは波状に配線しているため、伸縮時にもワイヤ自体の長さが変らず、原理的に電気抵抗は変化しない。そのため、LED用の配線としてこの波状ワイヤを用いた場合、フィルムを伸縮してもLEDの発光輝度は変化しない。

 また、金属ワイヤはピアノ線であるため、非常に強靭であり、導電性ラップフィルムを折り畳んで、ハンマーで叩いても断線しなかった。

 今回開発したラップフィルムに静電容量変化検出回路を接続し、透明で柔軟なタッチセンサーを作製することことにも成功した。極細金属ワイヤが配置されている場所に触れると、静電容量が変化し、触れたことが検出できるという。

 今後は、製造プロセスの効率化することで、この導電性透明ラップフィルムの量産体制を確立し、曲面タッチパネルやウェアラブルセンサーなどへの応用を目指していくという。

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