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加齢による高血圧リスクを高める受容体とは 生理学研究所が特定
日本では、現在高齢者の2人に1人が高血圧と診断されているという。高血圧は脳卒中や心臓病などを引き起こす要因となることから、高血圧の予防と治療は非常に重要な課題となっている。ヒトの血圧調節に関与する最も重要な生理活性ペプチドの1つがレニン‐アンジオテンシン系により産生されるアンジオテンシンIIという。アンジオテンシンIIは、アンジオテンシン受容体(AT1R)に作用することで血圧を上昇させる。
今回、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の西村明幸特任助教、西田基宏教授は、九州大学、マレーシアSabah大学、香川大学、ベルギー自由大学との共同研究により、加齢に伴い発現上昇するプリン作動性P2Y6受容体(P2Y6R)がAT1Rと複合体を形成(AT1R-P2Y6R)することで、アンジオテンシンIIによる血圧上昇が促進されることをマウスを用いた研究で明らかにした。また、AT1R-P2Y6R複合体が形成されるのを阻害することで、アンジオテンシンIIによる血圧上昇を抑制できることを明らかにした。
まず、研究グループは、アンジオテンシンIIの応答性に関与する分子としてP2Y6Rと呼ばれる受容体に注目した。通常のマウスとP2Y6Rを持たないマウスの双方にアンジオテンシンIIを4週間投与したところ、「P2Y6Rを持たないマウスでは血圧上昇と血管中膜の肥厚が抑制される」ことがわかったという。また、細胞膜上でP2Y6RはAT1Rと複合体を形成していること、MRS2578というP2Y6Rと結合する化合物が、AT1RとP2Y6Rの複合体形成を阻害することがわかった。
アンジオテンシンIIとMRS2578を同時投与することで血圧上昇が抑制されたことから、AT1R-P2Y6R複合体がアンジオテンシンIIによる血圧上昇に重要であることが示された。
また、成体(4週齢)のマウスの血管平滑筋細胞では、アンジオテンシンIIが細胞の肥大を引き起こすが、胎児の血管平滑筋細胞では肥大ではなく、細胞の増殖が優位に起こることが知られているという。そこで胎児と成体の血管平滑筋細胞においてP2Y6R遺伝子の発現量を調べたところ、P2Y6R遺伝子は成長するにつれてその量が増加することがわかった。そして成長に伴いAT1R-P2Y6R複合体が増加することで、アンジオテンシンIIの応答性が増殖から肥大応答に変化することが明らかとなった。非常に興味深いことに、1年齢の老齢マウスではP2Y6R遺伝子の発現量がさらに上昇していることがわかったとしている。
これについて、西田教授は「加齢に伴うAT1R-P2Y6R複合体の増加が、高血圧リスク上昇の原因の一端を担っているのかもしれません。」と話しているという。(編集担当:慶尾六郎)
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