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宇宙で生成された水のオルト:パラ比は地球と同じ―従来の定説覆す=―北大・羽馬哲也氏ら
(左)オルトH2OパラH2O分子の模式図。(右)50 K以下の低温では、パラH2Oの方がオルトH2Oよりも安定になり、オルト:パラ比は高温状態(オルト:パラ=3:1)から変化し、パラH2Oの存在量が増える。(北海道大学の発表資料より)[写真拡大]
北海道大学の羽馬哲也助教らによる研究グループは、宇宙で水ができる化学反応を実験室内で忠実に再現し、できた水のオルト:パラ比が地球と同じになることを明らかにした。従来は、オルト:パラ比から宇宙の極低温環境下で水が生成したときの温度を知ることができると考えられていたが、この仮説が正しくないことがわかった。
宇宙や彗星で観測される水のオルト:パラ比は0.1~2.5:1で、地球の水のオルト:パラ比(3:1)とは異なることがわかっている。これまでは宇宙の極低温環境がその原因であると考えられていたが、その仮説が正しいかは明らかになっていなかった。
今回の研究では、宇宙で氷ができ、気相へ放出される過程を、実験室内で忠実に再現した。そして、そのオルト:パラ比を共鳴多光子イオン化法で直接測定したところ、-263℃で氷を作った場合でも、地球のオルト:パラ比である3:1になることがわかった。つまり、宇宙でできた水のオルト:パラ比は、生成時の温度を示すものではないと言える。
このため、太陽系ができたばかりの頃がどのような温度環境であったかを知るためには新しい理論が必要になるという。
また、宇宙で観測される異常なオルト:パラ比の起源としては、水が氷から放出された後に経験する化学反応が、従来考えられていたよりもはるかに重要であることがわかった。化学反応は天体の物理環境(温度、圧力など)に大きく依存するため、今後宇宙の水のオルト:パラ比とその場で起きている化学反応の関係を調べることで、天体の物理環境が詳細にわかるようになることが期待される。
なお、この内容は「Science」に掲載された。論文タイトルは、「Statistical ortho-to-para ratio of water desorbed from ice at 10 kelvin」(和訳:10ケルビンの氷から脱離する水のオルト:パラ比は統計重率に従う)。
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