チタン・セレン原子層超薄膜の作製に成功―グラフェンを超える新機能に期待=東北大・菅原克明氏ら

2015年12月16日 22:15

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単原子層TiSe2の結晶構造を示す図(東北大学の発表資料より)

単原子層TiSe2の結晶構造を示す図(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の菅原克明助教らの研究グループは、グラフェンを超える電子デバイスへの応用が期待されているチタン・セレン(TiSe2)原子層超薄膜の作製に成功した。

 TiSe2は、チタン(Ti)とセレン(Se)が結合した層状物質で、グラフェンと類似した六角形 の結晶構造を持っている。近年、これらの層状物質を極限まで薄くした原子層超薄膜で、グラフェンを超える新機能を発現させる取り組みが精力的に行われている。

 今回の研究では、分子線エピタキシー法を用いて、グラフェン薄膜上に原子層レベルで精密に制御された高品質な単原子層TiSe2超薄膜を作成することに成功した。

 そして、その電子状態を角度分解光電子分光を用いて精密に調べたところ、TiSe2原子層超薄膜は、室温では半金属ではなくバンドギャップを持つ半導体で、薄膜中では電子と正孔がそれぞれ独立に運動している一方、低温では、電子と正孔が相互作用して励起子と呼ばれる強固な対(ペア)を作り、結晶中で新しい電荷の秩序を形成して特異な金属状態を出現させていることが明らかになった。

 今後は、この単原子層TiSe2に対して、電子と正孔の数を調節・制御する方法を確立し、半導体デバイス構築へ向けた材料設計を進めることが期待されている。

 なお、この内容は「ACS Nano」に掲載された。論文タイトルは、「Unconventional Charge-Density-Wave Transition in Monolayer 1T-TiSe2」。

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