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見つめ合った2人は、体の無意識の動きが同期する―生理学研究所・岡崎俊太郎氏ら
静止立位時の体動は、主に視覚・平衡感覚・筋や足底の自己受容感覚といった三つの感覚で制御されている。今回の研究では、視覚による体動制御が二者間でループすることによって遅れのない同期が実現されることがわかった。(生理学研究所の発表資料より)[写真拡大]
自然科学研究機構・生理学研究所(NIPS)の定藤教授と岡崎研究員らの研究グループは、コミュニケーションを取っている二人の間で、意識しなくても体動などが同期するメカニズムの一端を明らかにした。
通常、人が相手の体の動きを見て自分の体動の制御をする際は、二人のうちの一方のみが意識的に体動の調節を行っても、同期に時間的な遅れが生じるが、これまで会話中の二者間の体動が同期するなど、コミュニケーションをとっている二者間においては、体動などの動きが同期するといった現象がいくつか報告されていた。
今回の研究では、静止立位時に生じる小さな体動に注目し、会話などの手段が無くても二者がただ見つめ合うだけで、小さな体動が二者の間で時間遅れなく同期することを発見した。
さらに、二人の体動を多変量自己回帰モデルでモデル化し、二者間の因果解析とモデルによるシミュレーションを行った結果、静止立位時の体動の同期には「二者間の視覚的による体動制御が対等になる必要がある」ことが明らかになった。
静止立位時の体動は、主に視覚・平衡感覚・筋や足底の自己受容感覚といった三つの感覚で制御されているが、コミュニケーションをとる間にやり取りする視覚による体動制御が二者間でループすることによって、遅れのない同期が実現されるという。
研究チームによると、今後は、教育現場で汎用されているビデオ学習のような一方向の情報伝達の問題点や、リアルタイム性(遅れのある遠隔テレビ会議)の問題点についても、同様のフレームワークによって実験的な検証が可能になると考えられるという。
また、コミュニケーション中に起こる会話や体の動きの同調についても、同様の手法を用いて分析が可能になることが期待される。教育現場などで、二者のコミュニケーション状態を定量化したり、会話や体の動きの同期といった社会的相互作用に問題を抱える自閉症などの診断支援などでの実用が期待される。
定藤教授は「今回の研究で、これまで明らかになっていなかった社会的相互作用の基礎的なメカニズムの一つが明らかになりました。本研究の手法はさらに自然な状況においてコミュニケーションする複数の人間がどのようなバランスで相互作用しているかを分析することを可能にすると期待できます」とコメントしている。
なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Unintentional Interpersonal Synchronization Represented as a Reciprocal Visuo-Postural Feedback System: A Multivariate Autoregressive Modeling Approach」。
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