東北大など、原子1個の厚みしかない二酸化チタンシートの作製に成功

2015年9月11日 14:15

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(左)SrTiO3再構成表面に成長したLaAlO3薄膜の走査型トンネル顕微鏡像(15 nm × 15 nm)。(右)LaAlO3/SrTiO3界面の走査型透過電子顕微鏡。シミュレーション像(挿入図)と良く一致している。(東北大学の発表資料より)

(左)SrTiO3再構成表面に成長したLaAlO3薄膜の走査型トンネル顕微鏡像(15 nm × 15 nm)。(右)LaAlO3/SrTiO3界面の走査型透過電子顕微鏡。シミュレーション像(挿入図)と良く一致している。(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の大澤健男助教と一杉太郎准教授らの研究グループは、「原子1個の厚み」の二酸化チタン(TiO2)シートの作製に成功した。

 近年、グラフェンなど原子1個分の厚みしかない平板状物質「原子シート」が注目を集めており、通常の3次元結晶とは異なる驚くべき性質を示すことが報告されている。しかし、原子シートの種類が限られていたことから、材料のバラエティを広げることが強く望まれていた。

 今回の研究では、原子1つ1つが識別可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)と高品質な薄膜作製手法であるパルスレーザー堆積法が連結した独自開発の複合装置を使い、SrTiO3単結晶基板の再構成表面上にLaAlO3/SrTiO3ヘテロ接合を作製して、その表面・界面をSTMと走査型透過電子顕微鏡を用いて原子スケール空間分解能で観察した。

 その結果、中心部のLaAlO3薄膜表面とその周囲のSrTiO3基板表面にで格子状の模様ができており、両者の格子模様の電子状態を精密に調べて比較したところ、ほぼ一致すること、つまりTiO2層がLaAlO3薄膜表面に形成していることが分かった。さらにSTM像から、このTiO2シートは2次元性を有するだけでなく、「空孔が周期的に配列している」ことも明らかになった。また、LaAlO3薄膜の詳細な分光測定を実施したところ、最表面原子はTiであることがわかった。

 これらの結果から、SrTiO3表面上のTiO2層がLaAlO3薄膜上に浮かび上がり、周期的に穴を持つ「TiO2原子シート(ナノメッシュ)」が形成されることがわかった。

 このTiO2原子シートは半導体的な性質を持っており、今後の研究で電気伝導性や磁性などの物性が制御可能となることが期待できるという。

 今後は、今回の研究成果が原子シート研究をさらに活発化させ、新たな酸化物原子シート群の創製や新機能の付与に繋がることが期待される。

 なお、この内容は「ACS Nano」に掲載された。論文タイトルは、「A Single-Atom-Thick TiO2 Nanomesh on an Insulating Oxide」。

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