理研、難聴のメカニズム解明に繋がる遺伝子情報を公開

2015年7月18日 13:45

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12週齢の薬剤投与と非投与マウス間で統計的有意差が見られた遺伝子。(理化学研究所の発表資料より)

12週齢の薬剤投与と非投与マウス間で統計的有意差が見られた遺伝子。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

  • 実験の全体概要を示す図(理化学研究所の発表資料より)

 理化学研究所の角田達彦グループディレクターらによる共同研究グループは、難聴マウスのエピジェネティクス作用薬剤に応答する全ゲノムの遺伝子発現変動情報を収集し、そのデータを全世界に公開した。

 難聴は有病率の高い疾患の一つで、日本では約1,000万人が難聴と推計されている。進行性・加齢性の難聴の原因には生活習慣などといった環境因子と遺伝的要因が複合的に関わっていると考えられており、病気が進行するメカニズムは解明されていない。

 今回の研究では、難聴が発症し始める時期である生後4週齢のDBA/2Jマウスに、1日1回、マウスの体重1kg当たり500mgのLメチオニンと300mgのバルプロ酸を8週間投与し続け、このマウスの蝸牛(かぎゅう)の遺伝子発現量を測定した。

 その結果、少なくとも薬剤投与または非投与の一方のマウスで15,489遺伝子の発現データを収集し、そのうち49種の遺伝子は薬剤投与時に遺伝子発現量が統計的に有意に上昇していた一方で、195種の遺伝子は薬剤投与時に遺伝子発現量が統計的に有意に減少していることが分かった。

 共同研究グループは、調査した難聴の進行を抑制する薬剤を投与したマウスと未投与のマウスの全ゲノム遺伝子発現情報に関するデータを全世界に公開した。今後は、遺伝子発現の変動が見られた遺伝子群の機能と難聴との関連性を調査することで、難聴のメカニズムの解明が進むと期待されている。

 なお、この内容は「Genomics Data」に掲載された。論文タイトルは、「Gene expression profiling of DBA/2J mice cochleae treated with L-methionine and valproic acid」。

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