関連記事
理研、エリンギから眠り病の病原体に結合する物質を発見―診断・治療への応用に期待
ショウジョウバエ幼虫脳におけるセラミドホスホエタノールアミン(CPE)の分布。左 :変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)で標識したプロロトリシンの分布。中央:赤色蛍光タンパク質を発現させた神経細胞。右 :左と中央を重ね合わせた画像。CPEはプロロトリシンA2と結合することから、CPEは神経細胞には高濃度で存在せず、グリア細胞(矢印)に濃縮されていることが示された。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所の石塚玲子専任研究員・小林俊秀主任研究員らの共同研究グループは、エリンギに眠り病の病原体と結合するタンパク質が存在することを発見した。
眠り病(アフリカ睡眠病)は、病状が進行すると昏睡して死に至る難病で、ツェツェバエという吸血バエが媒介する寄生原虫「トリパノソーマ」によって引き起こされることが分かっている。特効薬は、現在のところ開発されておらず、トリパノソーマに特異的なセラミドホスホエタノールアミン(CPE)を使った治療薬が有効であると考えられている。
今回の研究では、変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)で標識した3つのタンパク質について人工膜を用いた結合実験を行い、いずれのタンパク質もCPEとコレステロールの複合体に非常に強く結合することを発見した。そしてショウジョウバエの幼虫脳におけるCPEの分布を可視化したところ、CPEは神経細胞には高濃度で存在せず、中枢神経系を構成する細胞の一種であるグリア細胞に濃縮されていることが分かった。
さらに生きたままの昆虫型のトリパノソーマと血流型のトリパノソーマに、EGFPで標識したエリリシンAを加えた結果、エリリシンAは血流型のトリパノソーマのみに結合することも明らかになった。
エリリシンAとトリパノソーマの結合は数分で起こるため、この結果はエリリシンAをトリパノソーマ感染の一次診断に利用できる可能性を示唆している。またエリリシンAはエリリシンBの存在下では細胞膜に孔をあける毒素として作用することが知られており、この性質を使ってトリパノソーマ感染の治療に応用できる可能性が考えられる。
なお、この内容は「The FASEB Journal」に掲載された。論文タイトルは、「Evaluation of aegerolysins as novel tools to detect and visualize ceramide phosphoethanolamine, a major sphingolipid in invertebrates」。
スポンサードリンク