理研、恋愛のドキドキ感を司る脳のメカニズムを明らかに

2015年5月18日 17:05

印刷

実験の概要を示す図。上:写真を見せてからPET検査を終了するまでのスケジュール。下:写真の見せ方。アングルの異なる恋人の写真、もしくは複数の友人の写真を、15秒の間隔をあけてランダムな順番で15秒間見せる。恋人の写真は様々なアングルで撮影された複数枚を、また友人の写真は恋人と同性であるが特別な感情は抱いていない複数の友人を撮影したものを用いた。なお恋人の写真と友人の写真は、全体的な印象が可能な限り似ているものを選んだ。(理化学研究所の発表資料より)

実験の概要を示す図。上:写真を見せてからPET検査を終了するまでのスケジュール。下:写真の見せ方。アングルの異なる恋人の写真、もしくは複数の友人の写真を、15秒の間隔をあけてランダムな順番で15秒間見せる。恋人の写真は様々なアングルで撮影された複数枚を、また友人の写真は恋人と同性であるが特別な感情は抱いていない複数の友人を撮影したものを用いた。なお恋人の写真と友人の写真は、全体的な印象が可能な限り似ているものを選んだ。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

  • PET検査後に行った質問票。被験者の気持ちの高まり度合いを把握するため、「気持ちの高まり全くなし」から始まり「経験しうる最大の気持ちの高まり」で終わる100mmの線分を示した。(理化学研究所の発表資料より)
  • 恋人の写真を見たときに活性化するドーパミン神経。恋人の写真を見たときにドーパミン神経が活性化した2つの領域を、MRIで撮像した脳の断層画像上に表示した。図の右側が鼻側。(理化学研究所の発表資料より)

 理化学研究所の渡辺恭良チームリーダーらの研究グループは、恋人の写真を見た時に活性化するドーパミン神経が、前頭葉の内側眼窩前頭野と内側前頭前野に局在し、特に内側眼窩前頭野のドーパミン神経がその時の気持ちの高まりの強さに関わっていることを、明らかにした。

 熱愛中は、相手に対する共感や自身の充足感、恍惚感など様々な感情に対応した脳の広い領域が活動していると考えられる。また、一夫一婦制のモデル動物であるハタネズミを使った研究では、オスとメスがつがいを形成するとき、神経伝達物質ドーパミンの放出が増大することが分かっている。しかし、ヒトにおいてドーパミンと恋愛の関係を明らかにした研究はこれまでなく、恋をしているとき脳で何が起きているのかは解明されていなかった。

 今回の研究では、異性と熱愛中である10名(女性6名、男性4名。平均年齢27歳。恋愛期間の中央値は17カ月)を対象に、恋人の写真と恋人と同性の友人の写真を見せた時の脳内のドーパミン放出の違いをPETで測定した。その結果、恋人の写真を見たときには、大脳皮質の内側眼窩前頭野および内側前頭前野でドーパミン神経が活性化していることが分かった。

 また、「気持ちの高まり全くなし」から「経験しうる最大の気持ちの高まり」を100mmの範囲で被験者に記録させたところ、感情の高まり度合い(ドキドキ感)は被験者によって違いはあるものの、友人の写真を見たときの平均14.8mmに対して、恋人の写真を見たときの平均が55.3mmと顕著な差が確認できた。

 さらに、被験者ごとのラクロプライドの結合シグナルとドキドキ感の強さをグラフにプロットしたところ、内側眼窩前頭野でのラクロプライドの結合シグナルが低いほどドキドキ感が高い、負の相関を示した。

 今後は、内側眼窩前頭野のドーパミン神経の活性化が恋愛に特異的な神経活動かを検証するとともに、セロトニンなど他の神経伝達物質と恋愛の関係の解明を進める予定となっている。

 なお、この内容は「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載された。論文タイトルは、「Imaging the passionate stage of romantic love by dopamine dynamics」。

関連記事