NYの視点:4月JOLTも米雇用回復ペース失速示唆

2015年5月13日 07:13

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記事提供元:フィスコ


*07:13JST NYの視点:4月JOLTも米雇用回復ペース失速示唆
米国の金融政策の鍵を握る労働市場の状況を見極める展開が続く。米労働省が発表した4月の雇用統計は利上げを正当化するような十分に強い結果にはならなかった。労働市場を更に細かく検証する上で注目されていた米FRB発表の4月の労働市場情勢指数(LMCI)も-1.9と3年ぶりに2ヶ月連続のマイナスに落ち込むなど、3月に続き4月の雇用も回復ペースが失速している新たな証拠となった。

さらに、イエレンFRB議長も注目する米労働省が発表したJOLT求人件数の3月分も2月分から15万件減少の499.4万件と、市場予想を下振れた。ただ、2月分は513.3万件から514.4万件へ上方修正され14年ぶりの高水準を記録。一部のアナリストの間で、「労働省は今まで燃料価格の下落の影響を受けたエネルギー関連の解雇を含んでいない」との疑惑が強まっている。企業の人員削減数の統計を行っているチャレンジャー&クリスマス社は、季節的な要因で労働省が実質的な解雇件数を把握するのは通常「1四半期後」としており、雇用指標の低調な結果が当面継続する可能性がでてきた。

JOLT求人件数の中で、解雇率(Layoffs/discharges rate)は1.3%と、2月の1.2%から上昇基調にあることは気がかりとなる。原油価格の下落を受けて、特にエネルギー関連企業での解雇ペースが加速した。テキサス州やシェールガス生産関連企業が目立つ州などが集中する中西部の解雇率は2011年6月以降ほぼ4年ぶりの高水準に跳ね上がった。ただ、悪材料ばかりではない。退職率(Quits rate)は2.0%と、2月1.9%から上昇。ほぼ、金融危機前の水準に戻した。「労働者の雇用市場に対する自信を示している」という理由でイエレンFRB議長はJOLT指数の中でも特に退職率に注目している。また、採用率(Hires rate)も3.6%と2月の水準を維持し、金融危機前の水準3.8%、4.0%にあと一歩というところまで改善。一概に雇用市場が悪化しているとも言えず更なる指標の結果待ちとなる。

○イエレンFRB議長の雇用たるみダッシュボード

◎危機前に比べ状態が改善/危機前の水準と比較
4月雇用者数(Nonfarm payrolls):22.3万人(3月8.5万人)/16.18万人(上回る)
3月解雇率(Layoffs/discharges rate):1.3%(2月1.2%)/1.4%(下回る)
3月求人率(Job openings rate):3.4%(2月3.5%)/3%(上回る)

◎状態が危機前より依然悪い
4月失業率(Unemployment rate):5.4%(3月5.5%)/5%(上回る)
3月退職率(Quits rate):2.0%(2月1.9%)/2.1%(下回る)
4月広義の失業率(U-6):10.8%(3月10.9%)/8.8%(上回る)
3月採用率(Hires rate):3.6%(2月3.6%)/3.8%(下回る)
4月長期失業率(15週以上):42.1%(3月44.3%、2月46.5%、前年50.6%)/19.1%(上回る)
4月長期失業率(27週以上):29.0%(3月29.8%、前年35.1%)
4月労働参加率:62.8%(3月62.7%)/66.1%(下回る)《NO》

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