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筑波大、身体活動によって体重減少とは別に肝脂肪を減らせることを明らかに
週250分以上の中高強度身体活動を行なうと、末梢単核球において、脂肪酸代謝関連因子のうち、脂肪酸合成に関与するSREBP1cの発現は減少した一方、脂肪酸分解に関与するCPT1の発言は増加した(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]
筑波大学の正田純一教授らの研究グループは、身体活動量を増やすほど非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)肥満者の身体組成、肝脂肪蓄積、糖脂質代謝、アディポカイン不均衡、炎症・酸化ストレス状態が改善することを明らかにした。
日本の肥満人口は増加の一途にあり、最近の人間ドック全国集計によると肝機能異常を有する成人の頻度が急増している。その背景には、内臓型肥満の増加に関連した非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加が大きく関わっている。
今回の研究では、筑波大学主催の食事療法、食事および運動療法による減量介入に参加した男性のNAFLD肥満者169名を対象に、生活記録機を用いて測定した日常の身体活動状況の長期記録データを利用し、減量介入の前後におけるNAFLD病態の改善度について、比較検討した。
その結果、250分/週以上の中高強度身体活動(MVPA)の実践が、体重減少とは独立して善玉コレステロールと抗炎症性アディポカインの増加、肝臓の貯蔵鉄と過酸化脂質の減少を誘導していることが分かった。さらに、末梢血単核球における脂肪酸代謝因子の遺伝子発現を測定したところ、250分/週以上のMVPAの実践は、脂肪酸の生合成に関わるタンパク質(SREBP1c)の発現を低下させ、脂肪酸のミトコンドリア内への輸送にかかわる酵素(CPT1)の発現を増加させることも明らかになった。
こうした結果から、非アルコール性脂肪性肝疾患による肥満を改善するには、適切な食事療法とともに週250分以上の中高強度身体活動を維持することが有用であると考えられる。
今後は、効果を得るのに最適な運動量を勧告するために、身体活動量の相対的重要性の解明を目的とした無作為化対照治験が必要になるという。
なお、この内容は「HEPATOLOGY」に掲載された。
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