JAMSTEC、深海底に好気性の微生物が生息していることを明らかに

2015年3月20日 10:41

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海洋研究開発機構などが実施した統合国際深海掘削計画(IODP)第329次研究航海「南太平洋環流域生命探査」の掘削地点を示す図。色の変化は、表層海水の基礎生産の指標となるクロロフィルaの濃度を示す(海洋研究開発機構などの発表資料より)

海洋研究開発機構などが実施した統合国際深海掘削計画(IODP)第329次研究航海「南太平洋環流域生命探査」の掘削地点を示す図。色の変化は、表層海水の基礎生産の指標となるクロロフィルaの濃度を示す(海洋研究開発機構などの発表資料より)[写真拡大]

  • 掘削船ジョイデス・レゾリューション号(左)とIODP第329次研究航海における微生物分析試料を採取する様子(右上)。船上に回収されたコア試料は、約4°Cに設定された船内の冷蔵実験室に運ばれ、センサーによる溶存酸素濃度の測定が行われた(右下)(海洋研究開発機構などの発表資料より)
  • IODP第329次研究航海「南太平洋環流域生命探査」により採取された堆積物のコア試料(海底表層から玄武岩直上まで)に含まれる細胞数(左)、溶存酸素濃度(中)、全有機物濃度(右)の深度プロファイル(海洋研究開発機構などの発表資料より)

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の稲垣史生上席研究員・諸野祐樹主任研究員らによる研究グループは、南太平洋環流域の海底を米科学掘削船「ジョイデス・レゾリューション号」で掘削し、極めて代謝活性が低い好気性の微生物が生息する「超低栄養生命圏」が存在することを発見した。

 過去10年以上にわたる科学海洋掘削における生命科学研究の進展により、地球全体の海洋下には微生物が生息する「海底下生命圏」が存在していることが明らかとなり、地球に残された最後の生命圏フロンティアと言われている。

 今回の研究では、地球上で最も透明度の高い海域として知られる南太平洋環流域において、米国の科学掘削船「ジョイデス・レゾリューション号」を用いた研究航海を実施した。7箇所の掘削地点で、海底表層から玄武岩直上までの全ての堆積物(厚さ最大131m)のコア試料を採取したところ、海底表層から約1億2000万年前に形成された玄武岩直上までの全ての堆積物の間隙水中に、酸素が溶存していることや、堆積物1平方センチメートルあたり約103~104細胞程度の微生物が生息していることが明らかになった。

 今後は、AMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」による科学海洋掘削等を通じて、地球上の異なる海洋堆積物環境における生命圏の機能や限界を規定する環境要因などが解明され、海底下における生命進化や生存戦略、地球規模の元素循環や気候・地殻変動との関連性等について、多くの歴史的な発見や新しい学術的パラダイムが創出されると期待されている。

 なお、この内容は3月17日に「Nature Geoscience」電子版に掲載された。

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