九大、免疫担当細胞ミクログリアがてんかん症状を緩和することを発見

2015年3月12日 12:53

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てんかん発作後、ミクログリアは、てんかん発作によって変性したニューロンから放出される自己DNAを認識する。この自己DNAはTLR9によって認識されることで、TNF-αの転写が促進される。その結果、ミクログリアはTNF-αを細胞外へ放出し、神経幹細胞へと働きかけることで、異常ニューロン新生を抑制する(九州大学の発表資料より)

てんかん発作後、ミクログリアは、てんかん発作によって変性したニューロンから放出される自己DNAを認識する。この自己DNAはTLR9によって認識されることで、TNF-αの転写が促進される。その結果、ミクログリアはTNF-αを細胞外へ放出し、神経幹細胞へと働きかけることで、異常ニューロン新生を抑制する(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 海馬に存在するミクログリア(紫)は神経幹細胞(緑)と隣接して存在している(九州大学の発表資料より)

 九州大学の中島欽一教授らによる研究グループは、海馬に存在する免疫担当細胞であるミクログリアがてんかん発作後に起こる異常ニューロン新生を抑制することで、てんかん症状を緩和することを発見した。

 てんかんは、ニューロンが過剰な興奮を示すことで誘発される痙攣や意識障害を伴う慢性神経疾患で、約30%のてんかん患者は、既存の薬剤治療では十分な効果が得られていない。

 今回の研究では、病原体由来DNAを認識するはずのTLR9遺伝子を欠損したマウスは、てんかん発作依存的な異常ニューロン新生がより増大していることを発見した。また、TLR9遺伝子欠損マウスを用いてこの現象を詳細に調べたところ、TLR9はてんかん発作後に変性を起こしたニューロンから放出される自己DNAを認識して活性化されることが分かった。さらに、活性化された TLR9は、ミクログリアからの炎症性サイトカインの一種TNF-αの産生を促すことで、てんかん発作依存的な異常ニューロン新生を積極的に抑制しようとしていることを突き止めた。

 今後は、本研究成果がてんかん発作発症やそれによって生じる脳機能障害の新たな改善法開発に繋がると期待されている。

 なお、この内容は3月11日に「Nature Communications」に掲載された。

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