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【2月23日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■ソニーをめぐる問題
―――理想的な著作権の運用方法について、どのように考えますか?
穂口 : 私が問題にしているのは2点です。一つは「音楽の大口使用者」が「著作権者」を兼ねている問題、もうひとつは「著作権」と「著作隣接権」が著作権法の中に混在しているため、著作権問題に多くの誤解や混乱が発生している問題です。
(参照:著作隣接権とは?)
http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime4.html
「音楽の大口使用者」には、テレビ局やレコード会社がありますが、中でも大手テレビ局が子会社に音楽出版社を設立して膨大な音楽著作権を保有していることは大問題です。つまり公共の電波を使って放送する力を悪用して音楽著作を集める行為は、著作権料を50%割引で使っていることと同義でもあり、また電波を持たない一般の音楽出版社の営業を妨害する行為であると言えます。不正競争防止法に抵触する行為であると言っても過言ではないでしょう。
しかしながら、一般の音楽出版社としては、電波に逆らうと自社の業績に悪影響がおよぶことを恐れて泣き寝入りをしている状態です。したがって、表面上は電波関係とそれ以外の音楽出版が仲良くしているように見えますが、実際にはテレビ関係の音楽出版社の存在で一般の音楽出版社の業績を大きく圧迫しています。
また、レコード会社の問題で言えば、一部の、はっきり言うとソニーが、大量の著作隣接権を集めて、その著作隣接権を盾に、インターネットを活用した新たなビジネスの妨害をしていることも大問題です。このソニーの妨害によって日本の音楽業界の改革が10年遅れ、音楽ファンが多くの不自由を強いられてる事実はすでに有名です。
私は著作隣接権の改正が必要だと考えています。具体的には、この著作隣接権は著作権とは別の法律に作り替えて、著作権よりは弱い権利に限定するべきです。具体的に特許に関する法律に準じる制度が良いと考えています。つまり、期間を限定し、また一定の対価での第三者への提供を義務づける必要があります。また、国民が音楽を楽しむ機会を企業の論理で奪うことのないよう、いわゆる独占禁止法のような法律によって権利行使を制限する必要を感じています。
―――穂口さんは、自分の著作権を3年間、自分で管理されたと聞きましたが?
穂口:はい、3年間の著作権自己管理の経験では、自己管理とすることで使用者に混乱が発生することを体験しました。将来的な自己管理の方法論を模索するとしても、現状では一般の方の著作権に関する認識や知識は限定的なので、現段階での自己管理は時期尚早であったと考えています。
また私は、著作権の自己管理に当たって、自前のデータベースシステムを用意して、インターネットサーバーが自動的に許諾するなど、出来る限りシステマチックな許諾システムを構築しましたが、それでもなお、多岐に渡る音楽の使用希望形態に自動的に回答することは難しく、多くの人的対応が不可欠でした。したがって、著作権者にとっても、使用者にとっても、著作権についてはJASRACなどによる一元管理が望ましいと言う、極めて当たり前の結果となりました。
■「日本の音楽環境が今のままで良いはずはありません」
―――この裁判を通じて、何を感じていますか?
穂口: この裁判でもっとも強く感じたことは、裁判制度を、私怨を晴らす目的に悪用した可能性です。訴えられた私の会社名は株式会社ミュージックゲートです。そこで、当然のごとくmusicgate.comと言うドメイン名を取得しています。また、musicgate.co.jp、musicgate.jpと言うドメイン名も同時に取得しています。
私の考えでは、どうやらこのドメイン名の取得競争に破れたソニーがその恨みを晴らす目的で今回の訴訟を仕掛けたと断定的に考えています。
それと言うのも、遡ること17年前、私が1998年にミュージックゲートを設立してmusicgate.comのホームページを公開していたところ、1999年から2000年にかけて、このmusicgate.comへのソニーからのアクセスが異常に多くありました。ちなみに、当時私の会社はいち早く社内に独自サーバーを設置して運用していましたので、いわゆるインターネットプロバイダーがアクセスの詳細を把握できるように、リアルタイムでアクセス解析が可能でした。
そして、ソニーからの異常なアクセスがあってから数ヶ月後に、ソニーを中心としたインターネット音楽配信関連会社である「レーベルゲート」がスタートしまし、そして数年後には「レーベルゲート」を運営母体とするインターネット音楽配信サービスの「Mora」がスタートしています。
おそらく、ソニーとしては当初は「ミュージックゲート」の名称でサービスをスタートしたかったのでしょう。たしかに「レーベルゲート」と「ミュージックゲート」では後者の印象が勝っています。しかしながらご承知のとおり、ドメイン取得は早い者勝ちの世界です。ソニーは私に一足お先にmusicgate.comを取得されたことで、相当な痛手があったと言っても過言ではないでしょう。そして、その後、現在にいたってもソニーが主導する音楽配信は、そのプログラムの不便さと基本戦略の間違いによって一向に発展の気配もありません。
そして、「レーベルゲート」をはじめとする、ソニーの音楽配信の直接の担当者が現ソニーミュージックレーベルズ社長であり原告の1人である村松俊亮氏だったと聞いています。
つまり、この裁判は問題の解決が目的でなく、ミュージックゲートを困らせることが主目的であったと考えることが自然です。なぜなら、レコード会社31社ともあろうものが、あきれるほど粗雑な証拠しか提出できず、結果としてTUBEFIREの閉鎖以外の成果を得られなかったり、著作権裁判の常識では考えられない結果で和解するなど、あまりにも不自然な状況が積み重なっているからです。
ちなみに、ご承知のとおり、携帯電話はすでにスマートフォンの時代に進化し、従来型携帯端末(いわゆるガラケー)の利用者は少数派になろうとしています。したがって、従来型携帯端末に利便性を提供していたTUBEFIREの役割はすでに終了していることから、裁判がなかったとしてもTUBEFIREは自社の判断で閉鎖となった可能性が高いと言えます。
つまりこの裁判は、原告にとっても、もともと裁判自体が不要であったと断言することが出来ます。今ではTUBEFIREを使わなくても、携帯端末(スマートフォン)でYouTubeを簡便かつ公然と視聴すること出来るばかりでなく、設定によってはオフラインでも視聴出来るように進化しています。そしてこれも当然ですが、YouTubeをスマートフォンで視聴しても著作権者から訴えられることもありません。
私はこの裁判を、ソニーグループが繰り返している一連の戦略ミスおよび経営ミスの一つと考えています。証拠資料を検証すると、ソニーグループがこの裁判の音頭をとっていて、他のレコード会社はソニーグループに付き合ったと考えて間違いない状況を散見することが出来ます。例えば、ソニーグループが賠償請求対象ファイルとして約1600ファイルをリストしているのに比較して、例えばユニバーサルは僅かに7ファイル。両者の規模を考えると、この両者の曲数の差は、裁判に対する温度差とする以外に説明がつきません。
■レコード界の冬の時代に
穂口:次に印象深いことは、この裁判の3年数ヶ月の期間で、原告レコード会社の数が31社から24社に減少したことです。これも時代の流れだと感慨深く感じるとともに、音楽業界のこの惨状を改善するために何らかの行動を起こす必要があるとも感じています。
私は、おそらく行動を起こすでしょう。そして、レコード会社各社の認識の間違い、取り分けソニーの妨害によって世界から大きく遅れた日本の音楽環境を微力ながら改革したいと考えています。そしてそのことは、一部のレコード会社にとっては朗報となるでしょう。また、一部のレコード会社にとっては痛手となるかも知れません。
いずれにしても、ほとんどの国民の皆様が感じていらっしゃるとおり、日本の音楽環境が今のままで良いはずはありません。卓越したボーカリストはその力量に見合った評価を得なければなりません。音楽産業には錬磨した技量を持つミュージシャンを支援する責任があります。そしてなによりも、国民の皆様に多様な音楽をお届けする機会やシステムの発展を、自社の利益や既得権益を超えて提供する責務があると感じています。
原告の皆様には、音楽業界の衰退を招いた自らの所業を反省して頂きたく、現在の経営体制では困難であろうことも理解しながら、今後は利益のみに偏らない事業運営を目指すよう強く要望致します。
■穂口雄右氏の陳述書全文
http://www.tubefire.com/dct/hoguchichinjutusyo.pdf
(聞き手 編集部・黒薮哲哉)【了】
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http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20150216_3
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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