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空からの噴火予測 ドローンに高まる期待
東京大学地震研究所噴火予知研究センターの金子隆之助教らの研究チームが、およそ10年前から、ヤマハ発動機の自律航行型無人ヘリ「RMAX G1」を用いた研究を行っている。[写真拡大]
御嶽山の噴火から半年が経とうとしている。戦後最悪の火山被害をもたらした今回の噴火で浮き彫りとなったのは、「活火山に登山することのリスク」と「噴火予知の難しさ」だ。
近年、中高年を中心に登山ブームが起こっている。そんな中、日本百名山の一つでもあり、古くから山岳信仰でも知られる御嶽山は知名度も抜群で人気の山だった。また3000m級の山であるにもかかわらず、登山の難易度が比較的低いことから、初心者や家族連れなどで訪れる人も多く、今回の火山被害も、ベテランなら携帯しているはずのヘルメットなどを持っていなかったことなども、被害を拡大させた要因ではないかと考えられている。
火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏も、この災害に対する見解の中で「活火山に登ることはリスクがあると考えて欲しい」と述べているが、それはすなわち、火山の専門家でも正確な噴火予知は難しいということでもある。正確な予測ができれば、事前に避難警告や登山制限を行っていたであろう。
気象庁が事務局を担当し、学識経験者及び関係機関の専門家が委員を務める火山噴火予知連絡会は、昭和49年に設立された。それから40年にわたって年3回の定例会が開催され、全国の火山活動について検討が重ねられてきたが、地震など他の自然災害と同様、正確な予知や予測ができるまでには至っていない。結局のところ、噴火予知は不可能なのだろうか。
そんな中、昨今注目の無人機・ドローンが、火山観測の現場でも活躍しているのだという。噴火予知を行うためには、精度の高い観測データが必須だ。しかし、それを収集しようとすると、観測者自身が火口近傍域まで接近する必要があった。でも、正確な予測ができない以上、火山のプロとて命の危険が伴う。実際、国内外で観測中の事故が起きていることから、現在では、たとえ研究目的であっても、立入規制区域に足を踏み入ることは禁じられている。これでは正確な観測データも得られず、予知技術の進展も望めない。
そこで、ドローンの出番というわけだ。小型のマルチロータータイプは簡単な撮影で使われるようになり、農業分野での活躍が多い産業用無人ヘリもそのフィールドを広げている。産業用無人ヘリは全長約3メートルと、昨今のドローンブームの中で話題になる手軽なものと比較するとサイズも大きく、動力としてエンジンを搭載している点でも一線を画す。しかしこれこそが、火山観測に役立つ大きな理由の一つだという。その重量や大きなローターにより多少の風力でも安定して航行することができるため、火口に接近しての地形観測だけでなく、立入規制区域における地震計やGPS等の設置や回収、さらには火山灰のサンプル採取、火山近傍観測など、作業が可能であるという点で活躍の幅が広いと言えよう。
さらに、噴火予知の精度を高めることに直結する空中からの磁気測定も行えるとして、東京大学地震研究所噴火予知研究センターの金子隆之助教らの研究チームが、およそ10年前から、ヤマハ発動機<7272>の自律航行型無人ヘリ「RMAX G1」を用いた研究を行っている。これまでに、三宅島や伊豆大島、新燃岳、桜島などで試験的な運用を繰り返しており、桜島の山頂部に地震計を含む総重量10Kgにものぼる観測モジュールなどの設置や、新燃岳噴火前後の磁場の観測など、難しい作業を見事に成功させている。
この研究と無人ヘリの活用が成果を上げれば、日本の火山観測や噴火予測は格段に精度が上がるだろう。また、火山の噴火被害が懸念される世界の国々でも活用されれば、多くの命を救うことに貢献できるかもしれない。「噴火予知は不可能」と匙を投げる専門家も多い中、科学者たちのあくなき挑戦に大いに期待したい。(編集担当:藤原伊織)
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