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京大、男性不妊解消に繋がる精子幹細胞の自己複製メカニズムを発見
GDNFシグナルが細胞に伝わらない遺伝子改変マウスの精巣。これまではGDNFシグナルに異常があると精子幹細胞は生存・増殖・精子形成ができないとされていた(丸印:生殖細胞がない精細管。精子幹細胞~精子までのすべての生殖細胞がなく、セルトリ細胞だけが残っている)。しかし、一部の精細管で精子幹細胞マーカーCDH1陽性の細胞が集団で生存していることが見い出された(星印:赤色は精子幹細胞のマーカーCDH1で染色された部分)(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の篠原隆司教授らによる研究グループは、精子幹細胞の新しい自己複製メカニズムを発見した。
精子幹細胞は精巣細胞のおよそ0.02~0.03%しか存在しないが、自己複製能力を持っており、一生涯精子を作り続けることができる。精巣の体細胞が分泌するグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)は精子幹細胞の自己複製に必要であることが分かっているが、同研究グループはそれ以外にもFGF2と呼ばれる増殖因子が存在することを見出していた。
今回の研究では、まず、GDNFの受容体を変異させたマウスの精巣を別個体の精巣に移植したところ、GDNFに依存しない幹細胞が精巣内にあることが分かった。さらに、精巣細胞をFGF2の存在下で培養したところ、細胞集団を形成し5カ月以上にわたって培養可能であることが示された。実際に長期培養を行った後に不妊マウスの精巣へ移植すると、培養細胞由来の精子形成が再開され、正常な子孫を得ることもできた。
研究メンバーは「実験動物を用いて幹細胞の増殖要求性をより明確にすることで、ヒトの精子幹細胞の培養系の確立にもつながり、近い将来、男性不妊症の治療法の開発や遺伝病の発症機序の理解が進むことが期待できます」とコメントしている。
なお、この内容は2月12日に「Stem Cell Reports」に掲載された。
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