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理研がアルツハイマー病を進行させる糖鎖を発見 治療薬の候補に
厚生労働省が2008年に全国の5県2市で実施した若年性認知症に関する疫学調査では、18~64歳人口における10万対の患者数は47.6人(95%信頼区間:45.5-49.7)で、男性57.9人、女性36.7人となった。また、全国における患者数は3.78万人(95%信頼区間:3.61-3.94万人)と推定している。アルツハイマー病(AD)は認知症患者の6割以上を占める疾患で、高齢化が進む社会において、その克服が大きな課題になっている。
しかし、現状では有効な予防薬や治療薬が少なく、早期の開発が強く求められている。アルツハイマー病は、アミロイドβ(Aβ)というタンパク質が脳に蓄積することが原因と考えられているが、発症していく過程でAβの蓄積がどのように増えていくか、そのメカニズムには不明な点が多く残されているのが現状だ。
理化学研究所グローバル研究クラスタ疾患糖鎖研究チームの木塚康彦基礎科学特別研究員、北爪しのぶ副チームリーダー、谷口直之チームリーダーらの共同研究グループは15日、バイセクト糖鎖と呼ばれる糖鎖がアルツハイマー病を進行させることを発見したと発表した。
研究グループは、遺伝子組み換えによってAβを溜まりやすくしてアルツハイマー病に似た症状を示すADモデルマウスを用い、さらに、バイセクト糖鎖を作る酵素「GnT-Ⅲ」を欠損させた、“バイセクト糖鎖を持たないADモデルマウス”を作製した。このマウスを使って脳内のAβの蓄積を調べたところ、バイセクト糖鎖を持たないマウスでは、Aβの蓄積が激減し、記憶能力の低下も抑えられることがわかった。
次に、バイセクト糖鎖の欠損によって、なぜAβの蓄積が抑制できたのかを調べた結果、バイセクト糖鎖を欠損させるとAβの産生量が減少することが明らかになった。Aβは、本来バイセクト糖鎖を持つβセクレターゼ(BACE1)という酵素によって前駆体タンパク質(APP)から作られるが、バイセクト糖鎖を持たないBACE1はAPPと細胞内で異なる分布を示すことでAPPに作用できなくなり、その結果Aβの産生が抑制されることがわかったという。
現在、国内外でBACE1阻害剤の開発が行われているが、副作用を持つ可能性が指摘されているという。今回の研究結果から、バイセクト糖鎖の産生を阻害するとBACE1によるAβの産生を防ぐことができ、かつBACE1が持つ他の機能は妨げないことが示唆された。これらから、バイセクト糖鎖を作る酵素GnT-Ⅲの阻害剤は、BACE1阻害剤よりも副作用が少ないアルツハイマー病治療薬の候補になりうると考えられるとしている。
いずれにしても、朗報だ。治療の手立てのないこの病気に苦しんでいる人や家族は多い。本人の人としての尊厳や家族にも影響する難病だけに研究開発の進展を願う。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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