九大、統合失調症では知覚を司る自発脳活動が音刺激で上昇することを明らかに

2015年1月16日 12:55

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九州大学の研究グループは、統合失調症で知覚や認知機能を司るγ帯域皮質活動が、音刺激によって変化することを明らかにした(写真:九州大学の発表資料より)

九州大学の研究グループは、統合失調症で知覚や認知機能を司るγ帯域皮質活動が、音刺激によって変化することを明らかにした(写真:九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の平野羊嗣特任助教・鬼塚俊明講師らによる研究グループは、統合失調症で知覚や認知機能を司るγ帯域皮質活動が、音刺激によって変化することを明らかにした。この成果は、統合失調症の診断を補助するバイオマーカーとしての応用が期待される。

 統合失調症の原因は未だ解明されていないものの、近年、知覚やや認知機能を司るγ帯域の電気的な大脳皮質活動の異常が関与していることが分かってきた。

 今回の研究では、いくつかの周波数の連続クリック音を聞いている時と安静時の脳活動を調べた。その結果、統合失調症患者は、健常者と比べて自発γ(自発活動としてのγ帯域皮質活動)が増加していること、そして同期γ(刺激に同期するγ帯域皮質活動)は減少していることが分かった。また、統合失調症患者の左聴覚野で、刺激中の自発γが高いほど幻聴が重症であることがわかった。

 この結果から、統合失調症の聴覚野では、外からの音刺激により、背景活動としての自発γが異常に上昇し、ランダムに活動することで、結果的に刺激に対する同期性が低下することがわかった。さらに、このランダムで異常な背景活動が、幻聴の発生に関わっている可能性が示された。

 今後は、本研究で見つかったγ帯域皮質活動が統合失調症発症のどの段階で出現するのかを調べることで、早期診断や早期治療に応用できると期待されている。

 なお、この内容は1月14日に「JAMA Psychiatry」オンライン版に掲載された。

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