慶應大、廃シリコン粉末から多孔質複合厚膜を創製 産廃からリチウムイオン電池部材製造の可能性

2015年1月9日 16:27

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廃シリコン粉末・カーボンナノファイバー多孔質複合厚膜の模式図(慶應義塾大学の発表資料より)

廃シリコン粉末・カーボンナノファイバー多孔質複合厚膜の模式図(慶應義塾大学の発表資料より)[写真拡大]

  • レーザ焼結の有無による充放電後の電極表面形態の違い(左:焼結無、右:焼結有)(慶應義塾大学の発表資料より)

 慶応義塾大学のの閻紀旺(やんじわん)教授らによる研究グループは、半導体デバイスや太陽電池の生産過程で大量に発生する廃シリコン粉末を主原料にして、多孔質の複合厚膜の創製することに世界で初めて成功した。

 近年、リチウムイオン電池の高容量化のためにシリコン電極に関する開発が進められている。一方で、半導体デバイスや太陽電池を生産する際には、粒径サブミクロン~数ミクロン程度のシリコン粉末が大量に発生し、産業廃棄物として廃棄されている。

 今回の研究では、廃シリコン粉末にカーボンナノファイバーを付加し、様々な条件でレーザー焼結実験を行ったところ、ネットワーク構造を有する多孔質複合膜を合成することに成功した。

 この手法は膜の機械的強度、結晶性、気孔率を同時に制御することができるため、高容量かつ低コストのリチウムイオン電池負極を作るための新しい製造プロセスの可能性を示すものとして期待される。

 今後は、本研究で開発した多孔質複合膜をリチウムイオン電池負極として使用する際の電気化学特性を評価し、実用化に向けて開発を進めていく予定となっている。

 なお、この内容は1月5日に「Applied Physics Express」のオンライン版に掲載された。

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