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「アベノミクス」で株価は上昇しても、派遣労働者は今後も増加する見通し
自民党の政権復帰に伴い、安倍首相が推進する「アベノミクス」。景気改善や女性の社会進出の促進などを打ち出しているが、現在までの所、株価の大幅な上昇と、円安の進行による輸出企業の経営状況改善以外に、目立った成果が無いというのが実情であり、長引く景気低迷の脱却までには至っていない。我が国では、年々派遣労働者が増加し、正規社員が減少傾向にある。この流れは2015年も継続することが予想される。
その最大の理由が、国内企業が景気回復に確信を持てていないという現状がある。雇用者側の視点に立てば、経営状況により、雇用調整が容易な派遣労働者などの非正規雇用の割合が多い方が機動的に経営戦略が立てやすいため、景況感の大幅な改善がなされない限りは、正規雇用者の大幅な増加は期待できない。
派遣労働者の増加傾向の中でも、特に問題となっているのが、いわゆる「不本意非正規」と呼ばれる労働者の内、25~34歳の派遣労働を含む非正規雇用者が約30%を占めるという事実だ。「不本意非正規」とは、正社員として働ける機会がないため、不本意であるが非正規で働いている者を指す。この割合は、2013年で非正規労働者19.2%となっており、特に若年層で高い傾向がある。非正規雇用の問題点として、雇用が不安定であるほか、雇用者側からの教育が行われにくく、能力開発の機会が乏しいという点も挙げられる。これが非正規労働者のキャリア形成を難しくするとともに、正規雇用へのステップアップを諦めさせる要因ともなっているため、長期の視点に立った職業キャリアの展望が持ちにくいのだ。
この様に、派遣労働者を含めた非正規雇用の問題を抜本的に改善するために必要であるのは、迅速な景気の回復以外にはない。ただし、2014年には、派遣労働者の時間給の有為な上昇も観測されており、僅かではあるが非正規雇用者にとっては明るい材料ともなっている。この傾向が今後も継続するのか、また、非正規雇用の問題を抜本的に解決しうる、政治主導での景気回復がなされるのか。安倍首相就任から3年目を迎える2015年は、雇用問題の今後を占う試金石となりそうだ。(編集担当:八木新)
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