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九大、既存薬でがん転移を強力に抑制できることを発見
がん細胞とニッチがん細胞を示す図(九州大学の発表資料より)[写真拡大]
九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らの研究チームは、肝炎治療薬としてヒトに使用されている薬物(既存薬)「プロパゲルマニウム」(CCL2阻害剤)によって、がん転移を強力に抑制させることに成功したと発表した。研究成果は2日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」で公開された。
がん細胞の周囲には「がんニッチ」と呼ばれる細胞群が存在し、がん細胞の増殖や転移を積極的に手助けしていることが知られている。特に血液由来の「線維芽細胞」や「単球細胞」は、がんニッチの構成因子として重要だ。
がん治療においては、がん細胞だけでなく、このがんニッチも同時に消滅させる必要がある。しかしこれまで、どのようなメカニズムでがんニッチが形成されるかについてはあまりわかっていなかった。
今回、研究チームが注目したのは「Fbxw7」と「CCL2」と呼ばれる二つのタンパク質だ。まず、乳がん患者の血液細胞を調べ、Fbxw7の発現量が低い人は、がんの転移や再発がしやすくなることを発見した。次に、Fbxw7が低くなると、CCL2が過剰に分泌され、それががん細胞の周りに単球細胞を異常に呼び寄せて、がんニッチを作り上げていたことを研究チームは発見した。
そこで、このCCL2の働きを阻害するために、マウスにCCL2阻害剤である「プロパゲルマニウム」を投与すると、単球細胞の集積がみられなくなり、転移先でのがん細胞の増殖が抑えられたという。
プロパゲルマニウムは既に肝炎治療薬としてヒトに使用されている薬物(既存薬)でもあることから、研究チームは今後、なるべく早い時期にプロパゲルマニウムの臨床治験を進めていく予定としている。(記事:町田光・記事一覧を見る)
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