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はらぺこの幼虫が満腹になると蛹になる 筑波大らが栄養と発育の新たなメカニズムを発見
ステロイドホルモンは、生物種を問わず、個体の発育や恒常性の維持、さらには性的な成熟に重要な役割を担う。特に子供から大人への成長に際して適切なタイミングで生合成されることが重要だが。しかし、その生合成のタイミングを調節する仕組みには未だ不明な点が多く残されているという。
国立大学法人 筑波大学 生命環境系の丹羽隆介准教授と日本学術振興会特別研究員の島田裕子研究員は15日、キイロショウジョウバエを主材料として、ステロイドホルモンの生合成を促す新しいメカニズムを発見したと発表した。
今回、丹羽准教授らの研究グループは、モデル動物として広く用いられているキイロショウジョウバエの幼虫を主材料として、幼虫が蛹になるタイミングを調節するメカニズムを追究した。キイロショウジョウバエの幼虫も、摂取する栄養量に応じて蛹になるタイミングが変化することがよく知られているという。今回の研究でまず注目したのは「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質。セロトニンは神経から分泌される生理活性物質で、ほとんどすべての動物において生きていく上で欠くことのできない役割を持つ。
丹羽准教授らはエクジステロイド生合成器官である前胸腺注に分布する神経を注意深く調べたところ、セロトニン産生神経の一部が投射注することを新たに見出した。そのセロトニン産生神経は、他の神経と比べて非常に長く複雑な形をしていたので検出することが難しく、その存在はこれまで全く明らかにされていなかった。丹羽准教授らは今回の仕事によってその全形態を初めて同定し、SE0PGと名付けた。セロトニン産生神経SE0PGの細胞体は、昆虫の脳神経系において摂食を司る領域(摂食中枢)に近い位置にあることもわかった。
さらに、このセロトニン産生神経SE0PGの突起の形状は、幼虫の栄養状態によって変化することがわかった。つまり、富栄養条件の餌で幼虫を飼育すると神経突起(軸索)がホルモン生合成器官(前胸腺)にきちんと投射するのに対して、貧栄養条件の餌で飼育した場合には、神経が生合成器官にほとんど投射しなくなった。すると、エクジステロイド生合成が遅れるため、幼虫が蛹になるタイミングが遅れる。丹羽准教授らはセロトニン産生神経SE0PGの機能を抑制した時に、エクジステロイド生合成遺伝子群の発現が減少し、体内のエクジステロイド生合成量が低下することを示した。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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