生殖細胞の数で性が変わる仕組みとは 北大らが発見

2014年12月5日 11:23

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

 生殖腺は生殖細胞と体細胞から構成され、性的特徴を生み出す重要な器官だ。ほ乳類では、生殖細胞のあるなしに関わらず染色体の組み合わせにより雄にも雌にもなるという。しかし、代表的モデル魚であるゼブラフィッシュでは、始原生殖細胞を取り除くと雄となることが知られている。このことは、生殖細胞の数によって性が決まる機構の可能性を示唆していた。しかし、生殖細胞を欠く個体がどのような仕組みで雄になるのか、いくつの始原生殖細胞があれば雌になるのか分かっていなかった。

 今回、北海道大学、愛媛大学およびシンガポールのテマセク生命科学研究所は、共同で魚類の性分化における始原生殖細胞(卵や精子のもととなる細胞)の役割を調べた。その結果、生殖細胞を部分的に欠損させた個体または異なる数の生殖細胞を移植した個体のどちらの実験系においても、雌雄の出現に同様の傾向が認められたという。通常の3.0~40個の生殖細胞をもつゼブラフィッシュでは雌雄は1:1となったが、9個以下ではほとんど(8割以上)が雄となり、生殖細胞を完全に欠損した個体ではすべての個体が雄となった。

 また、受精後14日のゼブラフィッシュでは、卵巣分化の最初の指標となる生殖細胞の増殖および減数分裂が雌となる個体で観察されたが、少数の生殖細胞をもつ個体では雄となる個体と同様に雄マーカー遺伝子の発現が認められた。このことから、未分化生殖腺が卵巣へ分化するための生殖細胞の増殖および減数分裂への移行が、生殖腺へ移動した始原生殖細胞の数に依存することが明らかとなり、一定量以上の生殖細胞の存在が雌になるためには必要であることが示されたとしている。

 研究グループでは、今回の成果により、始原生殖細胞を利用した性統御技術の開発につながることが期待されるという。また、いかに生命が多様な性分化の仕組みを発達してきたかなど生命の根幹に迫ることができるとしている。(編集担当:慶尾六郎)

■関連記事
京大らがiPS細胞で筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復
「病は気から」は本当だった 阪大らが交感神経による免疫制御のメカニズムを明らかに
ドコモ、東北大、妊婦疾患予防法などを共同研究
日本人のゲノムを解析するツールとは 病院や大学・研究機関で疾患や体質データを解析
東北大がパーキンソン病の悪化の要因を発見 予後予測や認知機能障害対策に期待かかる

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連記事