京大、ウラン化合物超伝導物質の熱磁気効果が理論値の100万倍に達することを発見

2014年12月4日 12:37

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熱磁気効果を引き起こす新しい機構の概念図。このような超伝導体はカイラル超伝導体と呼ばれている(京都大学の発表資料より)

熱磁気効果を引き起こす新しい機構の概念図。このような超伝導体はカイラル超伝導体と呼ばれている(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の山下卓也博士後期課程学生・住吉浩明同学生・松田祐司教授らによる研究グループは、あるウラン化合物超伝導体は、熱磁気効果がこれまでの超伝導体よりも桁違いに大きくなることを発見した。

 超伝導を起こす物質は、温度を下げることで2つの電子がペア(クーパー対)を組み、電気抵抗がゼロになる。しかし、実際には電気抵抗がゼロになる温度まで下げなくても熱ゆらぎの効果によって電子のペアは生成される。この現象によって、磁場や熱流とは垂直方向に電位差が現れる「熱磁気効果」が発生することが知られているものの、その効果は非常に小さいと考えられており、注目されていなかった。

 今回の研究では、ウラン化合物超電導体URuwSi2の超純良試料を用いて、熱磁気効果を精密に測定した。その結果、試料の純良性が増すほど熱磁気効果が顕著に現れることや、その大きさは従来の理論値の100万倍に達することが分かった。

 これは、従来の超伝導体にはなかった新しいメカニズムによる超伝導現象を見出したものであり、今後の超伝導基礎研究の発展につながることが期待できる。また、今回発見された新しいタイプの超伝導ゆらぎのメカニズムを利用した熱電変換材料の開発・応用が期待される。

 なお、この内容は12月1日「Nature Physics」電子速報版に掲載された。

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