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京大、動物が不快な刺激に慣れる仕組みを明らかに
線虫C.エレガンスの物理的な刺激の馴化学習・記憶現象と神経回路を示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の杉拓磨特任助教らによる研究グループは、動物が不快な刺激に馴れる際の仕組みの一端を解明することに成功した。
動物は、不快で嫌な刺激でも、さらされ続けることで馴れていくことが知られている。しかし、この「馴れ」の仕組みを解明するためには、膨大な数の神経細胞から構成される脳神経系で「馴れ」に関わる神経細胞を見つけ出し、その細胞だけを特異的に分子レベルで解析する必要があり、学習・記憶の度合いを数値化して比較できるシンプルな実験系はほとんど存在していなかった。
今回の研究では、302個の神経細胞しか持たないシンプルな神経系の線虫「C.エレガンス」を用いて、飼育プレートに振動を与えた時の後ずさり行動について調べた。
その結果、6時間の振動を与え続けた線虫集団と振動を与えなかった線虫集団に、18時間後に再び振動を与えたところ、振動を与え続けていた方の集団は明らかに移動量が減少していた。また、振動を記憶する神経について詳しく調べたところ、AVAとAVDという2つの神経細胞が記憶に関与していること、そしてこれら両方の神経細胞に異常が起きた時のみ、記憶に異常が発生するということが分かった。
研究メンバーは「次は、分子レベルの実験から、同定された細胞がどのように記憶を保持しているのかを理解することが最重要課題です。(中略)さらに、今後の研究から、記憶の分子的実体に迫ることにより、認知機能障害やストレス体験がもととなるPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの疾患の理解と、その分子標的薬の開発につながることが期待されます」とコメントしている。
なお、この内容は科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」電子版に掲載される。
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