京大、昆虫が有性生殖から単為生殖に切り替えるメカニズムを明らかに

2014年11月19日 22:14

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ヤマトシロアリの卵門。シロアリの卵の表面には精子が入るための孔(卵門)が開いている(上図)。多くの卵の卵門を色素で染めて調べると、一部の卵には卵門がないことが分かった(左下図)。右から卵門数9、4、2、0(京都大学の発表資料より)

ヤマトシロアリの卵門。シロアリの卵の表面には精子が入るための孔(卵門)が開いている(上図)。多くの卵の卵門を色素で染めて調べると、一部の卵には卵門がないことが分かった(左下図)。右から卵門数9、4、2、0(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の松浦健二教授・矢代敏久特定研究員は、昆虫のメスが卵の表面にある卵門を閉じることによって、有性生殖から単為生殖に繁殖様式を切り替える仕組みを明らかにした。

 多くの動物は、メスの卵とオス精子によって次世代を作り出す有性生殖を行っている。メスにとっては自分の遺伝子だけで子を作る単為生殖の方が効率的であるが、メスにとって単為生殖が好ましい状況であっても、オスに交尾されると授精して有性生殖の子が産まれるので、単為生殖できなくなるという仮説があった。

 今回の研究では、女王が有性生殖と単為生殖を使い分けているシロアリの卵6,000個を用いて、繁殖様式のスイッチ切り替えの仕組みを調べた。その結果、卵門(卵の表面にある精子が通るための孔)の無い卵は単為生殖、卵門がある卵は有性生殖で発生していること、そして、女王が若いうちは卵門の多い卵を産み、老化とともに卵門の無い卵を産むようになることが明らかになった。

 つまり、シロアリの女王は、通常は有性生殖によって働きアリや羽アリを生産しているが、老化して死ぬ前に卵門の無い卵を産むようになり、自分の後継女王を単為生殖で生産していることが判明した。

 研究メンバーは、「単為生殖は昆虫において普遍的現象であり、深刻な害虫化の要因の一つでもあります。長期的視野で人と昆虫がうまく付き合っていくためには、生物としての昆虫の理解が深まることが重要であり、その礎となるような研究を積み重ねていきたいと思います」とコメントしている。

 なお、この内容は米国科学誌「Proceeding of the National Academy of Sciences USA (PNAS)」オンライン速報版に掲載される。

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