京大、チンパンジーの同種殺しは適応戦略のためであることを明らかに

2014年9月30日 17:12

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隣の集団の声を聞きつけ、徒党を組んで戦い に向かうチンパンジーの雄たち(京都大学の発表資料より)

隣の集団の声を聞きつけ、徒党を組んで戦い に向かうチンパンジーの雄たち(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の松沢哲郎教授らによる研究グループは、チンパンジーに見られる同種殺しは適応戦略で説明がつくことを明らかにした。

 チンパンジーでは同種感の殺しや共食いがしばしば報告されており、その理由としては食物や配偶相手を得るための適応戦略であるという仮説があるものの、人間による生息地の変化や餌付けが原因で非適応的な行動を起こしているという反論も出ていた。

 今回の研究では、50年間に分かって研究されたチンパンジー18集団とボノボ4集団から得られた情報をまとめたところ、チンパンジーは15集団で152件の殺し(観察例58件・推定例41件・疑い例53件)、ボノボでは1件の疑い例があることが分かった。その多くの例では、集団間の攻撃による殺しで、加害個体数が被害個体数を大きく上回っていた(中央値8対1)。一方、殺しの発生率の変異は人為的な影響の指標と無関係であることも明らかになった。

 今後は、本研究成果がヒト科における同種殺し行動のメカニズムやその抑制方法の解明に繋がると期待されている。

 なお、この内容は「Nature」に掲載された。

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