メガネなしで空中に見える3D映像 JSTと慶大が開発

2014年9月4日 12:40

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記事提供元:エコノミックニュース

3D映画や3Dテレビなど、3D映像技術は日常のさまざまな場所で用いられるようになった。しかし、現在普及している立体映像の提示技術では、3D眼鏡などの特殊な装置の装着が必要であったり、観察可能な範囲が狭かったりと制約が多い。また、公共空間など不特定多数が訪れる場所で複数人が同時に3D映像を見ることは困難だ。

 これを受け、今回、科学技術振興機構(JST)は、戦略的創造研究推進事業の一環として、慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科の舘暲(タチススム)特別招聘教授、南澤孝太准教授らとともに、複数のユーザーが同時に裸眼で観察可能な科学技術振興機構映像を空中に投影できる科学技術振興機構ディスプレイ「Hapto MIRAGE」を開発したと発表した。

 この研究プロジェクトでは、「さわれる情報環境」の実現を目指し、3D映像に手で触れて操作できる、「見たものを見たままにさわれる」ディスプレイの研究開発を進めてきた。ユーザーが3D映像に自然に触るには、ユーザーのいる現実空間と3D映像との間に物理的な障害が無い構造で3Dディスプレイを構成する必要がある。しかし、既存の3Dテレビでは、ガラス面があるために3D映像に直接触れず、映像と異なる位置で操作を行うことになってしまう。頭部搭載型ディスプレイ(HMD:Head-Mounted Display)を用いて3D映像を提示する方法もあるが、これはユーザーが周囲の実環境から遮断され、現実空間と情報空間との間に乖離が生じることになるという課題があった。

 Hapto MIRAGEは従来の3Dディスプレイの課題であった、「裸眼で多視点の3D映像」、「現実空間への3D映像の重ね合わせ」、「複数人での3D映像の共有」、「広範囲からの3D映像の観察」を実現した。例えば、ペンで示した空間中に直接、3次元的なスケッチを描く、商品や展示品などの現実の物体の上に立体映像を重ねる、展示台の上に立体映像を投影し展示台を動かせば3D映像も動くように実物体を介したインタラクションを行う、といった現実空間と情報空間が3次元的に融合する。

 原理は、同研究グループが提案したARIA(Active-Shutterd Real Image Autostereosopy)法を応用。ARIA法で構築される3Dディスプレイは、モーションキャプチャセンサー、液晶ディスプレイ、透明液晶ディスプレイ、フレネルレンズの4つの要素から構成される。この手法では、まずユーザーの視点位置をモーションキャプチャにより計測し、その頭部位置に対応した両眼視差映像を液晶ディスプレイに表示。この映像がフレネルレンズの手前の空間中に実像として結像する。

 しかし、このままでは左目用の映像と右目用の映像が両方とも左右の眼に入ってしまうため、それを防ぐために透明液晶ディスプレイを液晶ディスプレイとフレネルレンズとの間に配置している。透明液晶ディスプレイは、左右の眼それぞれに対応した映像がそれぞれの眼のみに入るように、光線の進行方向を決定するアクティブシャッターとして働く。これにより、左目用の映像はユーザーの左目のみに、右目用の映像はユーザーの右目のみにと、空間中に結像した視差映像が正しく片方ずつ交互に入り、ユーザーは立体映像として認識することができる。視差映像とアクティブシャッターの位置は、ユーザーの頭部位置に応じて変化するため、広い範囲から3D映像の観察が可能となる。

 今後は、この成果を、同研究プロジェクトで別途開発している触覚提示技術と統合し、3D映像に触った際のリアルな触感を提示することにより、より高い存在感を提供できるインタラクティブな情報環境を構築する方針だ。(編集担当:慶尾六郎)

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