ピンク・ネブラ vol.17

2014年8月15日 11:17

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記事提供元:sorae.jp

ピンク・ネブラ vol.17(Image credit: NASA)

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CCiCap開発状況

 2012年8月、NASAは商業有人宇宙輸送機開発のフェーズ3のCCiCap(Commercial Crew Integrated Capability)にボーイング、スペースX、シエラネバダの3社を選定した。

 CST-100を開発しているボーイングは2014年8月末の開発期限を目指して、現在20のうち18マイルストン達成で442.1Mドル獲得、残り37.9Mドル。打上げロケットアトラスV改良型の射点SLC-41のCDRは、7月に完了している。

 今年6月、NASAは、スペースXとシエラネバダにおける開発期限を8月末から2015年3月末に7か月延長することを発表した。ドラゴンV2を開発しているスペースXは、18のうち14マイルストン達成で357Mドル獲得、残り103Mドル。11月に射点での打上げ中断試験、2015年1月には打ち上げ後の飛行中断試験を行う。ドリームチェイサーを開発しているシエラネバダは13のうち11マイルストン達成で209.5Mドル獲得、残り18Mドル。秋から一連の滑空試験を開始、2016年11月にアトラスVの無人で打上げで初飛行を目指すと発表している。

 これら3社の他、ブルーオリジンはNASAと契約金のないスペースアクトアグリーメント(SSA)を結び、自己資金で開発を進め、20のうち19マイルストンを達成。同社は、商業有人宇宙輸送機開発の最初のフェーズのCCDev1で3.7Mドル、CCDev2で22Mドルを獲得しているが、これまでの投資額は500Mドルを超えている。親会社のアマゾンドットコムのジェフ・ベゾス氏は、フォーブス誌400人のビリオネアの12位、27.2Bドルの資産家である。

次は最終開発フェーズのCCtCap

 各社、CCiCapのマイルストンの達成とともに、今年8月~9月にも出ると言われている最終開発フェーズのCCtCap(Commercial Crew Transportation Capability)に向けたアピールを行ってきた。

 ボーイングはNASAケネディース宇宙センターのシャトル整備棟OPF-3(Orbiter Processing Facility-3)をリース契約、CST-100の製造・組み立ての拠点としている。ケネディース宇宙センターにモックアップを展示し、ビル・ネルソン議員(宇宙飛行士議員)がシートに座るなどして強烈にアピールした。次の選定がなければCST-100開発チームの215人を解雇して開発を継続しないとの覚悟の表明とも受け取れる解雇60日前通達まで行っている。

 スペースXは全て自社開発・製造であることがコスト面で有利であり、また世界市場に向けた営業ネットワークも強固である。ドラゴンV2のスーパードラコがパワードで正確にNASAケネディ宇宙センターに戻ってくることは、CST-100のパラシュートとの比較において、先進的で魅力的な運行技術であるばかりかコストにも反映されることが期待されている。

 シエラネバダはグローバル戦略を展開、今年1月に欧州宇宙機関やドイツ航空宇宙センターと、先月はJAXAと技術開発における協力関係を締結した。ドリームチェイサーのパートナーシップ“ドリームチーム”はアメリカ50州中32州にわたり、国内外の宇宙機関、企業、大学など50を超えている。また、今年6月にはオービテックテクノロジーズを買収、液体ロケットエンジン、環境制御生命維持システム、姿勢制御装置(RCS)などを強化した。

 NASAがどこを商業有人宇宙輸送機開発の最終フェーズに選定するのか、注目の発表が近づいている。

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