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【アナリスト水田雅展の株式・為替展望】地政学リスクに対する警戒感の落ち着きが焦点
■一旦はリバウンドだが、お盆休暇の薄商いの中で不安定な動き
来週(8月11日~15日)の株式・為替相場については、地政学リスクに対する警戒感の落ち着きが焦点となる。日経平均株価は7月31日から8月8日までの7営業日で実質的に1000円超下げただけに、8日の米国株の大幅反発を受けて一旦はリバウンドの展開となりそうだが、お盆休暇の薄商いで不安定な動きとなる可能性もあるだろう。13日発表の日本4~6月期実質GDP1次速報に対する反応も注目点だ。
前週(8月4日~8日)の日本株は週初からやや軟調な動きだった。4~6月期の企業業績は自動車や電機・精密など製造業を中心として想定以上の好業績が相次いだが、ウクライナ情勢、イスラエル情勢、イラク情勢、そしてエボラ熱など、地政学リスクに対する警戒感で欧米株が軟調となったことが投資マインドを後退させた。5日発表のトヨタ自動車<7203>の好業績も、市場全体のムードを一変させるには至らなかった。
日経平均株価は7月31日から8月6日まで5営業日続落し、8日にはオバマ米大統領によるイラクでの限定的な空爆実施承認の声明を受けて、終値で前日比454円00銭安と急落した。7月31日の取引時間中に付けた戻り高値1万5759円66銭から8月8日の取引時間中に付けた1万4753円84銭まで、7営業日で実質的に1005円82銭(6.39%)下落したことになる。
米国市場ではダウ工業株30種平均株価が7月16日に付けた取引時間中の史上最高値1万7139ドル35セントから、8月7日の取引時間中に付けた直近安値1万6333ドル78セントまで、ほぼ3週間で実質的に805ドル57セント(4.70%)下落したことになるが、これに対して7営業日で実質的に6.39%下落した日経平均株価を見ると、リスクに対して敏感な日本株の特徴が鮮明になったと言えそうだ。米国株以上の下落となったことで、米国株離れとの見方も後退しただろう。
為替もドル安・円高方向、ユーロ安・円高方向に傾いた。地政学リスクの高まりでリスクオフの動きを強め、対ロシア制裁強化によるユーロ圏の景気減速に対する警戒感も強めた。8日の日本市場ではリスクオフの動きを強めて1ドル=101円50銭台、1ユーロ=135円70銭台まで円が上昇する場面があった。日銀金融政策決定会合後の黒田東彦総裁の記者会見に対する反応も限定的だった。
しかし前週末8日の米国市場では、ロシアがウクライナ国境付近での軍事演習を終了したとの報道を受けて、地政学リスクに対する過度な警戒感が後退する形になった。米国株はダウ工業株30種平均株価が前日比185ドル66セント(1.14%)高と大幅反発した。為替もリスクオフの動きが後退して、1ドル=102円00銭台、1ユーロ=136円80銭台とやや円安方向に傾いた。CME日経225先物9月限(円建て)は1万5010円だった。
8日の米国株が大幅反発し、為替もやや円安方向に傾いたため、来週の日本株についても一旦はリバウンドの展開となりそうだ。ただし地政学リスクについては予断を許さない状況が続き、お盆休暇の薄商いの中で不安定な動きとなる可能性もあるだろう。
さらに国内要因としては、13日発表の日本4~6月期実質GDP1次速報に対する反応が注目点となる。民間調査機関による予想中央値は前期比年率マイナス7.2%のようだ。1~3月期が消費増税前の駆け込み需要で同プラス6.7%と想定以上に高い伸びとなったことの反動で、4~6月期は当初の想定より落ち込みがやや大きくなった形だ。7~9月期はプラス成長が期待されるとはいえ、回復ペースに関して強弱感が交錯するだけに、1次速報に対する反応が注目される。
また4~6月期の業績発表が一巡したため、業績内容を精査したうえで好業績銘柄に対する個別物色の流れが強まりそうだ。8日発表のミクシィ <2121> の好業績が新興市場を中心に個人投資家のマインド改善につながるかどうかも注目され、7日発表のJPX日経400構成銘柄入替で新規採用となった銘柄に積極的な買いが入るかも注目されるだろう。
為替については、7月29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)でのテーパリング(量的緩和縮小)継続決定後、米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ時期を意識した動きも見られ始めたが、依然として米10年債利回りが上昇しない。地政学リスクなども影響して当面は1ドル=101円台後半~102円台前半での推移だろう。
その他の注目スケジュールとしては、11日の日本7月マネーストック、日本7月消費動向調査、12日の日本7月企業物価指数、独8月ZEW景況感指数、米7月中小企業楽観度指数、米7月財政収支、13日の中国7月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、ユーロ圏6月鉱工業生産、英中銀四半期インフレ報告、米6月企業在庫、米7月小売売上高、14日の日本6月機械受注、インドネシア中銀金融政策決定会合、韓国中銀金融政策決定会合、ユーロ圏4~6月期GDP速報値、米7月輸出入物価、15日の米7月鉱工業生産・設備稼働率、米8月NY州製造業業況指数、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。
その後は8月20日の米FOMC(連邦公開市場委員会)7月29日~30日開催分議事要旨公表、28日の米4~6月期GDP改定値、9月2日の豪中銀理事会、3日~4日の日銀金融政策決定会合、英中銀金融政策委員会、4日のECB理事会、5日の米8月雇用統計、8日の日本4~6月期GDP2次速報、16日~17日の米FOMCとイエレンFRB議長の記者会見などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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