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【 野田聖二の経済教室】今週の日米景気指標〜下振れの可能性も
【7月30日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
●生産の回復が前提条件
今週は月末月初にかかる週ということで、国内外で主要な景気指標が発表されます。
国内では30日に6月の鉱工業生産が発表されます。
市場の予想は前月比1.2%の低下となっており、消費増税後の減産基調が続く見通しです。注目は7月と8月の生産予測指数で、生産に持ち直しの兆しがみられるかどうかがポイントです。中でも生産全体に大きな影響を与える自動車(輸送機械工業)の生産計画が注目されます。
2009年以降の自動車の生産の推移をみると(このグラフ)、1年ごとに上昇と下降を繰り返していることがわかります。自動車の在庫循環は在庫率の前年比の推移にきれいに現れています。グラフを見ると、在庫率が年初から上昇(グラフは逆目盛)に転じており、これまでの周期性からみて、自動車の生産調整が年内続く可能性が疑われます。そうなると、景気は年後半踊り場を形成する可能性が高くなり、政府や日銀の景気判断が修正を迫られて、次回2015年10月の消費税引き上げ判断にも影響を与えることになるでしょう。
いずれにしても、景気が増税後の落ち込みから回復軌道に戻るためには、生産の回復が前提条件であり、鉱工業生産によってそれが確認される必要があります。
●ISM景況指数に注目
米国では月初の1日に、7月の雇用統計とISM製造業景況指数という、マーケットでも特に注目度が高い指標が同時に発表されます
市場の予想は、非農業部門雇用増加数が23万人、ISM景況指数が6月の55.3から56.0に改善となっています。雇用統計の方は強めの数字が出てくる可能性が高そうですが、注意したいのはISM景況指数の方です。
このグラフはドイツの景気の先行指標であるifo景況感指数と重ねたものです。7月のifo景況感指数が3か月連続で低下しており、ドイツの景況感の悪化が鮮明となっています。それに引きずられるようにISM景況指数が悪化する可能性があるのではないかとみており、予想外の悪化がマーケットのサプライズとなる可能性を一応頭の中に入れておいた方がよさそうです。その場合には、雇用統計の結果にもよりますが、長期金利(米10年債利回り)の低下が加速する可能性がありそうです。【了】
野田聖二(のだせいじ)/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)、『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)、著者のブログ『私の相場観』がある。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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