東大、認知症に関わるインスリン受容体の機構を明らかに

2014年7月19日 19:11

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カルシンテニンがキネシンタンパク質と大きいタイプのインスリン受容体を結びつけることを示した図。キネシンタンパク質は微小管と呼ばれるレールに沿って移動して、大きいタイプのインスリン受容体をシナプス領域へと輸送する。この輸送が線虫の学習を成立させるのに重要である(東京大学の発表資料より)

カルシンテニンがキネシンタンパク質と大きいタイプのインスリン受容体を結びつけることを示した図。キネシンタンパク質は微小管と呼ばれるレールに沿って移動して、大きいタイプのインスリン受容体をシナプス領域へと輸送する。この輸送が線虫の学習を成立させるのに重要である(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の大野速雄特任研究員らによる研究グループは、インスリンを受け取るタンパク質は2種類あり、その片方がカルシンテニンと呼ばれるタンパク質の助けを受けてシナプス領域へ運ばれることで、情報が記憶されることを明らかにした。

 カルシンテニンは、アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの神経疾患に関係していると言われているが、その詳細なメカニズムについては解明されていなかった。

 今回の研究では、C.エレガンスと呼ばれる体調1mm程の線虫を調べたところ、インスリンを受け取るタンパク質にはアミノ酸の数が大きいタイプと小さいタイプが合成されることが分かった。さらに、大きい方のインスリン受容体がシナプス領域へ輸送されるためには、カルシンテニンの存在が欠かせないことが明らかになった。

 人間の身体でもインスリンを受け取るタンパク質は2種類存在していることが知られており、人間と線虫で共通の分子メカニズムが記憶や学習の基盤となっている可能性がある。今後の研究の進展によって、今回の研究成果は認知症の治療や、記憶や学習の基本的な仕組みの解明などに役立つと期待されている。

 なお、この内容は7月18日に「Science」に掲載された。

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